5歳の息子とスタバで本を読んだはなし
カーディガンだけを羽織って出かけたその日、5歳の息子とスタバで本を読んだ。
夫は本を読まない。
だから、結婚してからのこの十数年間、本を読むときに誰かが隣にいるという経験がなかった。
息子が午前保育だったある日。
図書館に向かった。
2週間に1回、子どもたちの本を借りているのだけれど、先週借りたばかりの本を息子がすべて読みきってしまった。
めずらしい。
きっかけは、先週、来客に備えて家具のレイアウトを変えたことだ。
ダイニングテーブルをリビングに移動した。

ぽっかり空いたダイニングに寝ころんで、息子は本を読むようになった。
毎日何度も、借りた1冊目から5冊目まで、くり返し読む。
読んでいたのは『アンパンマン』の原作。
やなせたかしさんが書いた昔の絵本で、その中でも映画の原作になっているものが好みのようだ。
もうすぐ6歳になる息子にとって、絵本と児童書の間くらいの文字量がちょうどいいらしい。
原作の色使いはアニメと少し違う。
もう少し落ち着いた、柔らかい色合いをしている。アニメのようにしっかりと計算された美しいデザインではなく、素朴で味わいあるキャラクターが描かれていた。
図書館に着くと、息子はおきまりのルーティンをこなす。
館内の検索機を使い、手慣れた様子で「あんぱんまん」と一文字ずつ、両手の人差し指だけで入力する。
「貸出中」になっていなければ借りられると覚えた息子は、画面に表示されたリストの中から読んだことがないものを探しては、自分ですぐに「印刷」ボタンを押してしまう。
5冊分のレシートを印刷したら、カウンターのおねえさんに渡しに行く。
名前を聞かれると「三條!」と大きな声で答えるものだから、小学生の姉が「『です』は? 『です』ってなんでいわないの?」と爆笑していた。
ふだんは時間がないのでそのまま帰る。
でもこの日は、読書スペースで並んで本を読んだ。
子ども用の小さな木の椅子に腰かけて、もくもくとページをめくる息子のとなりで、わたしは小説の資料になりそうな本を探し、メモをとっていた。
少し春めいてきた日だった。窓の向こうを行く人は薄手の上着に変わっていた。
だれかといっしょに本を読むのは久しぶりで、ふしぎな感じがした。
翌日。原作『あんぱんまん』を購入した。
スタバで電車を待つ間、それぞれ買った本を読んだ。

いつもは「ひまひま」と騒がしい息子といっしょにいても、こんなにも穏やかな時間が流れることにちょっと感動した。
(1,000字)
創作の引き出しをつくりたくって、日々のこまごまとしたことをぴったり1,000文字の日記にする挑戦をしています^^
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