ただ、そこにいるだけで、安心感を与える人
私は以前、職場で、くだらない嫉妬から生まれた人間関係の中で孤立していたことがある。
今日は、そのとき私を救ってくれていた人について書こうと思う。
周りの人たちは、
「目立つことはしたくない」
「私と仲がいいと思われるのは避けたい」
「あの人の機嫌を損ねるようなことはしたくない」
そんなふうに、空気を読んでいた。
職場全体がそんな空気になり、人の言動を常に伺っているような、ピリピリとした場所になっていた。
もちろん、陰では、
「大丈夫?」
「あの人、ちょっと態度悪いよね」
そんなふうに言ってくる人もいた。
でも、表立っては、みんな見て見ぬふりをしていた。
誰もが、その場の空気を荒らさないように、慎重に振る舞っていた。
そんな中、その人は、ただそこにいた。
どちらの敵でも味方でもない。
誰かと群れることもなく、どこにも属さず、淡々と自分の仕事をしていた。
一見すると、少し鈍感で、あまり周りのことに興味がないようにも見えた。
でも、後になって知った。
その人は、状況をかなり把握していた。
それでも、態度を変えなかった。
その人だけは、普通に私に仕事のことを話しかけてくれていた。
それが、当時の私にはとてもありがたかった。
私は別に、誰かに味方になってほしかったわけではない。
ただ、
誰かの目を気にして、自分の保身のために態度を変えない。
空気に流されず、自分で判断して、誰にでも普通に接する。
私は、そんなことを望んでいたのかもしれない。
当時の私は、
「これを言ったら、また陰で何か言われるかな」
「周り回って、誰に伝わるかな」
そんなことを常に考えながら、自分の振る舞いや言動を決めなければならなかった。
常に警戒して、戦闘モードだった。
でも、その人の周りだけは平和だった。
その人が、
「大変ですね」
「私は味方ですよ」
と言ってくれたわけではない。
むしろ、当時の私は、そんなことを言われても逆に信用できなかったかもしれない。
ただ、いろんな話を黙って聞いてくれた。
だから私は、安心して壁打ちができた。
本当に、凪のような人だった。
そして、不思議なことに、それは子どもに対しても同じだった。
自分が攻撃されないか。
コントロールされないか。
そんな不安から、どんなに攻撃的になって興奮している子でも、その人がすっと関わると、ふっと力が抜けて穏やかになる。
そういう支援者だった。
子どもたちも、その人が、
「自分の都合で攻撃したり、コントロールしたりしてこない人」
だということを、本能的に感じ取っていたのかもしれない。
しかし、その人は職場を辞めてしまった。
そして、全てを知っていたその人が、私に最後に残した言葉は、
「無理しないでくださいね」
だった。
その人が辞めて、初めて、その存在の大きさが身に染みた。
私にとって、そこだけは鎧を脱いで、素の自分でいられる場所だったのだと思う。
その人は、決して目立つ存在ではない。
でも、空気清浄機のような人だった。
その人がいるだけで、空気が変わる。
ただ、目立つ存在ではないから、その大きさには気づきにくい。
いなくなって初めて、その人がどれだけ大きな存在だったのか分かった。
その人は、あまり発言も主張もしない。
優しそうで、穏やかに見える。
でも、私は今思う。
それは弱さではなく、強さだったのだ。
意見を求められれば、しっかりと自分の考えを言う。
誰が言ったかではなく、何を言っているかで判断する。
相手によって、自分の態度を変えない。
一人でも、嫌われても、自分の場所に立っていられる。
一人で立っていられるからこそ、誰かとつるんだり、味方を作ったり、自分のために誰かを排除したりする必要がない。
誰かに合わせるのではなく、自分自身でいられる。
そんな人だった。
その人は、私にとって、
「本当の強さとは何か」を教えてくれた一人だった。
私も、強さにはいろんな形があると思う。
大きな声で主張する強さもある。
誰かを打ち負かす強さもある。
でも私は、
一人でも自分の軸を持ち、誰に対しても自分自身でいられる強さ。
そんな強さを持った人になりたい。
その人には、本当に感謝している。
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