忘れていたのは、僕だけだった。
娘の一言に、
思わず笑ってしまった。
でも、
驚いたのは、
そのツッコミじゃなかった。
目次
1.一年ぶりのアンリ
2.「アンリみたいやん。」
3.娘は、ちゃんと覚えていた
4.子どもの記憶は、おもしろい
1. 一年ぶりのアンリ
去年のハロウィン。
娘が幼稚園で読んでもらって気に入り、
我が家でも一冊の絵本を買った。
『おばけ びょうきになる』
主人公は、
立て続けに病気になるおばけ、
アンリ。
何度か読んだあと、
その絵本は本棚に並んだままになっていた。
気づけば、
もう一年近く開いていなかった。
2. 「アンリみたいやん。」
先週末、
僕は熱中症で寝込んだ。
ようやく良くなってきたと思ったら、
今度は歯が痛くなった。
歯医者へ通うことになり、
「なんで続くねん…。」
そんなことを思っていた。
すると、
僕の様子を見ていた娘が、
一言。
「アンリみたいやん。」
一瞬、
何のことか分からなかった。
でもすぐに思い出した。
あの絵本の主人公だ。
思わず、
妻と顔を見合わせて笑ってしまった。
3. 娘は、ちゃんと覚えていた
驚いたのは、
その例えの上手さじゃない。
一年近く読んでいなかった絵本を、
ちゃんと覚えていたことだった。
しかも、
ただ覚えていただけじゃない。
目の前で起きた出来事と、
自然につながっていた。
僕の中では、
とっくに本棚の奥へしまわれていた絵本。
でも、
娘の中では、
まだちゃんと生きていた。
4. 子どもの記憶は、おもしろい
子どもって、
忘れるのも早い。
でも、
思っている以上に、
ちゃんと覚えている。
親が忘れていた絵本も。
何気なく読んだ一冊も。
ふとした瞬間に、
今の出来事と結びついて出てくる。
「アンリみたいやん。」
あの一言で、
僕は絵本の内容だけじゃなく、
去年のハロウィンのことまで思い出した。
子どもの記憶って、
本棚みたいに並んでいるんじゃない。
いろんな思い出が、
どこかでつながっていて、
ある日突然、
「そういえば。」
と取り出してくる。
だから、
今日何気なく読んだ一冊も、
いつか思いがけない形で、
娘の言葉になるのかもしれない。
