殻を破った夏の続きーー次女の挑戦!【1000文字ノート#28】
小さい頃から次女(中2)は、目立つことが苦手だった。外では、おとなしくあまりしゃべらない子だった。
小学3年で姉の影響を受けてバドミントンを始めたが、運動神経が良いとは言えず、何を習得するにも時間がかかった。
当初、私と夫が力を入れていたのは姉の方。次女は「とりあえず一緒に連れていく」という感覚だった。正直、試合に出る姿なんて想像できなかったし、コートに一人で立てるかどうかの心配をしていたほどだ。
小学5年のころから大会に出始めるが、感情を表に出さず、淡々としたプレー。やる気があるのかないのか、緊張しているのかしていないのか——わからない。でも私は、彼女がコートに立っているだけで十分だった。
練習は裏切らない。
火・金・土曜の夜練、5年生からはクラブチームでの日曜丸一日練習を姉と一緒にこなし、着実に力をつけていった。技術は上がってきても、声は相変わらず出ない。クラブチームの代表に怒鳴られても、やっぱり声が出ない。
中学に入りすぐ、3年生から声がかかって入部。そこには、卒業した姉が残した「8大会連続個人戦優勝」という大きな記録があった。入部当初、3年生の先輩に「○○先輩の妹の割には強くないね」と言われた。
夏にはその先輩に勝てるようになった。
だけど、どうしても勝てない他校のライバルがいた。1学年上。
中1の夏の大会・新人戦・春の大会と、3度対戦し、全敗。
ファイナルまでいくのに勝てない。
そして今年の夏、相手が3年生で迎える最後の夏の大会。4度目の決勝戦へ。
猛暑の体育館。私は2階席から見守った。
決勝戦は会場の全注目を浴びる。あんなに目立つことが苦手だった子が…
最初の1点が決まった瞬間、次女の口から聞いたことのない声が出た。「え…?」と私は思わず固まった。1点ごとに響く、自分を鼓舞する声。震えるほどの執念。気付けば鳥肌が立っていた。
結果は惜敗。リードを保ちながらの相手の粘りに力尽きた。
それでも、これまで見たどの試合よりも激しく、魂のこもったラリーだった。試合終了と同時に二人ともしゃがみこんだ。勝ったライバルも、負けられないという重圧と戦っていたのだろう。
勝ち負け以上に、勝利にこだわって戦い抜いた次女の姿に、私の涙は止まらなかった。
越えられなかった壁。でも、明らかに何かが変わった。
「最後だから勝ちたかったな…」
「もう戦えないのか…」
次女は静かにそうつぶやいた。
次女には続けていることがある。
最初にその子に負けた日から、裏の公園でのダッシュ21本×2セット。
淡々としているように見えて、負けたら悔しいに決まっている。
私は、次女への向き合い方を反省した。どこかで、次女の実力や可能性を勝手に決めつけていた。長女を優先し、比べていた部分もあったと思う。
それでも次女は、自分の力で殻を破った。
来月最初の週末、新人戦の予選が始まる。
「お母さん、今日も腕痛いだろうけどよろしく!」
今日は夜練の日。手投げ、ノック。追い込む練習。
ずっと親子で続けてきた大切な時間。
私にできることは、全部やりたい。
この子の“静かな強さ”を、これからもっと信じていきたい。

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