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レジェンド降臨!あの日、職場で起きた奇跡【1000文字ノート#52】

『人生の履歴書』シリーズを書き上げながら、ふと思い出したことがある。
履歴書の内容からは外れるので『番外編』ということで…

みなさんは、有名人や芸能人を街で見かけたら、声をかけられますか?

実は私は――それができない。


前職は、そういう場面が頻繁に起こる職場だった。
4階建てのビルの1階3階が私の勤める会社、そして2階がドラマやCMの撮影スタジオだったのだ。

首都圏からのアクセスもよく、敷地は広く、建物はやたらと大きい。
ただし、エレベーターはひとつだけ

私は1階の事務所勤務だったが、3階の営業部へ行くことも多く、その4年間で何人もの芸能人に遭遇してきた。

見通しのいい広いロビーで見かけることもあれば、逃げ場のないエレベーターの中で居合わせることもある。

「あ、テレビのままだ」
「ほっそ。」
「きれいだな」
「めちゃイケメン!」
「感じいいな」
「……うわ、感じ悪」

心の中では好き勝手につぶやきながら、顔はひたすらポーカーフェイス

同僚たちは「握手してもらっちゃった!」と嬉しそうに報告してくる。
でも私は、どうしても無理だった。

「応援しています」
たった一言でもいいのに。

度胸がある、と言われることは多いのに、なぜかそこだけは踏み出せない。
相手の時間を奪ってしまう気がして、妙に気を遣ってしまうのだ。

格好つけているように聞こえるかもしれない。
でも、あまりにそれが日常になると、慣れてくる自分もいる。

ただ――そんな私の平常心が、ついに揺らいだ。

「今度のドラマで、キムタク来るってよ。」


ビル管理のおじさんたちと仲良くしていた私は、その朗報をいち早く耳にした。

A LIFE〜愛しき人〜

日曜劇場に、レジェンド、木村拓哉。

決して熱烈なファンというわけではない。それでも、私たち世代にとって彼が“スター”であることは、疑いようがない。

そりゃ、心も踊る。

連続ドラマの撮影となれば、通う期間も長い。
車も特定済み。
駐車場を見れば「あ、今日はいるな」とすぐ分かる。

他のキャストは何度も見かけた。
なのに――なぜか、レジェンドにだけは会えない。

確実に“いる”のに、出会えない。

同僚は何度も遭遇しているというのに。
そういう運命なのか。

その頃、私はひそかに情報を横流ししていた。
ママ友のTちゃんに「今日、来てるで」と。

Tちゃんは「拓哉様!!」と常日頃から叫んでいる根っからのキムタクファン。もし目の前で会えたら死んでもいい!とまで言っていた。
私から情報を受け取り、出待ちをする。

撮影の日には、追っかけらしき人が数名待っていることもあった。

何日か通ったTちゃんは、ついに出待ちに成功。しかも子どもを連れていたこともあって、なんと握手までしてもらえたという。

そして私は、いまだにTちゃんから感謝され続けている。(当然、元気に生きておられますw)


私はというと、もちろん仕事中なので張り付くことはできない。
それでも、その期間はやたらと3階の営業部へ足を運んだ(笑)

なんだ。
普段クールぶってるくせに、私も十分ミーハーじゃん。

ドラマの進行とともに、撮影も終盤。
もはや諦めムードが漂いはじめた頃。

学校から電話がかかってきて、ロビーに出た。
通話を終え、顔を上げた、その瞬間――

階段から降りてきた。

木村拓哉、降臨。

時が止まり、スローモーションだった。

オーラ、やばっ。
かっこよすぎる。
実在するんだ。

長年テレビ越しで見てきたスターが目の前にいる。
キムタクは、キムタクだった。
間違いなく、オンリーワンだった。

思ったより小柄かもしれない。
けれど、オーラでその倍くらいに見える。

いつものポーカーフェイスはどこへやら。
私はただ、ぽかんと口を開けたまま、完全なるマヌケ面で、ロビーで談笑する彼を呆然と眺めることしかできなかった。

いろんな有名な方に会わせていただいた4年間。
それでも、木村拓哉は別格だった。


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