ホルモンと脳を脅かす環境化学物質 ~超微量でも有害な化学物質の存在~
前回の記事では、農薬による生態系の破壊の現状について意見を述べた。しかし、地球を汚染し、自然を破壊している化学物質は農薬だけではない。今回の記事では、生物に健康被害を与えている合成化学物質について考察したい。
1.環境ホルモンの脅威
生物に健康被害を与えている合成化学物質は色々とあるが、まず環境ホルモンについて考えてみたい。環境ホルモンとは、正式には「外因性内分泌攪乱化学物質」と呼ばれ、環境中に含まれているホルモン攪乱作用をもつ物質を意味する。
1997年から約10年、日本や欧米では環境ホルモンの研究が集中的に行われ、ダイオキシン、PCB、プラスチック素材のビスフェノールAやフタル酸エステル、農薬などの人口化学物質の環境ホルモン作用が調べられた。その結果、2007年のWHOの国際会議で、環境中に内分泌を攪乱する化学物質である環境ホルモンは実際に存在し、女性ホルモン・男性ホルモン・甲状腺ホルモンなどを攪乱する物質があると確認された。また、2012年にWHOは、環境ホルモンを「世界的脅威」と位置付けた。
ホルモンは、女性ホルモン・男性ホルモン・アドレナリン・インシュリンなど、50種類以上が存在すると言われている。ホルモンは、体の恒常性を維持したり、エネルギー代謝を調節したり、妊娠・出産にも重要な役割を果たしている。また、子供の成長過程における各臓器や脳の発達、性的な成熟においてもホルモンは必須である。このように人体に重要な働きをするホルモンは元々、体内でごく低用量で作用する生理化学物質なので、環境ホルモンもごく低用量で影響が出ることが実験研究で証明されている。環境ホルモンは野生生物や人間に深刻な影響を与えていると言われており、その点について、木村-黒田 純子氏の著書「地球を脅かす化学物質」から引用する。
「米国の女性生物学者シーア・コルボーンらが1996年(日本語版1997年)に『奪われし未来』を出版し、環境中にホルモンを攪乱する人工化学物質(環境ホルモン)が存在し、野生生物や人間にも影響が及ぶと警告しました。野生生物では、米国のピューマのオスに停留精巣が起こって不妊傾向が見られたり、ワニのペニスが縮小したり、カモメの生殖行動異常(メス同士のつがい)や卵の孵化率の低下が見られました。日本国内の巻貝イボニシでは、97カ所中94カ所でメスにオスの生殖器が見られ、個体数が減少したなど様々な報告があります。」
「動物実験や疫学研究から、環境ホルモン作用は科学的に立証されてきており、脆弱な胎児や小児、 また生殖細胞への影響はすでに深刻な事態ではないかと危惧されています。
子どもの肥満や糖尿病など内分泌異常の疾患、アレルギーなど免疫異常、自閉症やADHDなどの発達障害が増えている原因の一つとして、環境ホルモンが関わっている可能性は多くの研究者が指摘しています。」
「環境ホルモン曝露により発症増加が懸念されている生殖器官の疾病には、女性では不妊のリスクを上げる子宮内膜症、卵巣発達不全、子宮がん、卵巣がん、乳がん、男性では精子数減少、精子形成不全、停留精巣、尿道下烈、精巣がん、 前立腺がんなどが挙げられており、日本でも増加傾向にある疾病が多いのです。」
以前の記事で述べたとおり、人体は、どんなに医学や科学が発達しても、その仕組みが解明できないほど、複雑・精妙にできているが、ホルモンの生成過程や機能についても、同様に複雑精緻である。例えば、代表的な女性ホルモンであるエストラジオールは、代表的な男性ホルモンであるテストステロンとよく似た化学構造をとっているが、エストラジオールはテストステロンから産生されている。つまり、酵素の精密機械のような働きによって、元々は男性ホルモンであった物質が、女性ホルモンに変化する。その後、男性ホルモンと女性ホルモンは、特異的な受容体によって全く異なる働きをするようになる。このような精巧な仕組みにより、ホルモンは生成され、機能しているのだが、環境ホルモンと呼ばれる外因性内分泌攪乱化学物質は、ホルモンの本来の作用を攪乱・阻害し、上述のとおり、生物に様々な障害を引き起こしている。
また、人間の生殖能力については深刻な状況ににあり、書籍「生殖危機 化学物質がヒトの生殖能力を奪う」の著者である、アメリカのマウントサイナイ・アイカーン医科大学の教授シャナ・H・スワン氏の論文によると、先進諸国の男性の精子数は、1970年代からの40年間で半分以下に急減したうえに、2045年には生殖可能レベルを下回る精子数になると予想されている。人間という種の存続が脅かされているのである。私達は、基本的な生物としての機能を損なう可能性がある化学物質にさらされており、早急な規制が必要であろう。
2.脳を脅かす化学物質
次に、脳を脅かす化学物質について考えてみたい。脳はおよそ100億個の神経細胞が約100兆個のシナプスと結合して、非常に複雑なネットワークを形成している、精緻な化学情報機械というべきものである。脳の発達、特に脳高次機能の発達には環境が大変、重要であり、環境の中でも、化学物質環境は遺伝子発現の基礎になると言われている。現在、有害な化学物質が多く開発されており、脳への深刻な影響が懸念されている。
人体に化学物質が入る経路は、口から摂取する経口、呼吸から入る経気、皮膚から入る経皮の3通りが考えられる。今回は、その中でも、経気による有害物質の吸入曝露について、脳に与える影響や健康被害について考えてみたい。以下は木村 - 黒田 純子氏の書籍から引用する。
「呼吸から環境化学物質を取り込む経気の場合、肺に入った有害な化学物質は経口と違い、解毒機能をもつ肝臓を経ずに直接血管に入り、全身に送られてしまうので、より注意が必要です。」
「経気で入る物質の中でも、匂い物質は鼻の内部にある特殊な神経細胞である嗅細胞の受容体に結合して、その信号が直接脳に伝達されるので、脳への影響が大きいのです。」
「香料の多用も問題となってきています。日本では強い人工香料の入った芳香剤や洗濯柔軟剤などが多種類販売される一方で消臭剤がたくさん売られています。これらの匂いに関わる人工化学物質によって気分が悪くなったり、体調不良になったりする人が増えています。」
「嗅覚系は、香料だけでなく、有害な環境化学物質の曝露も問題です。農薬など有害な環境化学物質を曝露した際、嗅覚神経経由で脳内嗅覚系が短期間に直接曝露されるので、血液脳関門を介した緩慢な脳内侵入と違い、大きな障害を起こす可能性があります。」
「環境省の調査では、微量のホルムアルデヒドの長期曝露で、喫覚系の神経細胞の異常興奮、ホルモンの中枢・下垂体でのホルモン産生の障害、記憶に重要な脳・海馬での神経伝達の異常が確認されています。実際、匂いに敏感で、人工的な匂いにより被害を受けている方がいること、また症状に表れなくとも匂い物質が私たちの脳に予想より大きな影響を及ぼすことを、私たちは理解する必要があるでしょう。」
有害化学物質が脳に与える有害性についての研究で、アメリカで鳥の卵にダイオキシンを様々な濃度で注入し、孵化寸前のヒナの脳を調べる実験が行われた。その結果、濃度によって差があったが、全て脳に異常が出たという。また、有害化学物質が人間の脳に与える影響については、近年の異常犯罪の増加などは、脳が完全にケミカルに狂い出した結果ではないかと考える脳神経学者もいる。この点において注目するべき研究がある。上述のとおり、環境ホルモンと呼ばれる外因性内分泌攪乱化学物質は、ホルモンの本来の作用を攪乱・阻害するが、アメリカの刑務所で暴力的な強姦をして女性を殺した凶悪犯罪の犯人を三十数人、調べたところ、それらの男性の大多数が女性ホルモンの値が異常に高かったという。
人間は万物の霊長として、脳の高次機能を有している。それによって、人間は他の動物にはない、様々な才能や心性、特徴を持っている。有害化学物質により脳が破壊されるのであれば、それは人間らしい特性、すなわち人間性の破壊であり、由々しき事態である。
3.吸気による有害化学物質の毒性の強さ
有害化学物質による被害を防ぐためには、化学物質の性質だけでなく、流入経路についても理解しなければいけない。先に述べたように、人体への化学物質の流入経路は3通りあるが、割合でいうと、80%以上は呼吸によるもの(経気)で、口から摂取するもの(経口)は十数%、皮膚から入るもの(経皮)は数%と言われており、経気の割合が高いことは強く意識する必要がある。
また、鼻から吸いこまれた有害化学物質は直接、肺に行き、肺でガス交換された後、そのまま血液に取り込まれ、心臓から全身に回ることになる。肺から吸収され、解毒機能をもつ肝臓を経ず、分解されずに体内を回るため、経気による化学物質の吸入は、経口の場合と比べて毒性が強くなる。例えば、有害な薬剤のスプレーを、呼吸により肺で吸収した場合は、食べ物と薬剤を一緒に飲み込んで胃腸から吸収した場合と比較すると、毒性が100倍~1万倍も強くなるという研究結果がある。
人間の防御機構には、呼吸によりミストを吸い込んだ場合の防御メカニズムが備わっておらず、人体に及ぼす影響が大きいため、より注意が必要なのである
4.強烈な毒性を持つ有害化学物質
化学物質の中には、強烈な毒性を持つものが存在する。例えば、近年、多用されるポリウレタン(ウレタンフォーム)の原料、イソシアネート類の吸入曝露の危険性が欧米で注目されているが、イソシアネート類は、香料にも多用されている。イソシアネート類の有害性について、木村 - 黒田 純子氏の著書から引用する。
「イソシアネート類は、徐々に香料などが放出され持続性をもつためのマイクロカプセルの原料としでも多用されています。柔軟剤などに含まれるマイクロカプセルは、使用した個人だけでなく周囲にも、人工香料とともに、マイクロカプセルの微小な破砕物が徐々に放出されます。マイクロカプセルが壊れる際に、刺激性の高いイソシアネート類が放出される可能性もあります。」
「原体であるイソシアネート類は経口摂取では分解されやすいのですが、気体として吸入したり、皮膚接触すると毒性が強く、例えばトルエンジイソシアネートの労働安全衛生法の作業環境許容濃度は 0.005ppmと規定されています。毒性の知られているホルムアルデヒドやトルエンの許容濃度は、それぞれ0.1ppm、50ppmですから、トルエンジイソシアネートの毒性はホルムアルデヒドの20倍、トルエンの1万倍にもなります。ウレタン発砲断熱材の吹き付けや塗装工事中の吸入曝露により、作業者に死亡例を含む健康被害が報告されています。」
トルエンジイソシアネートの危険性については、下記の厚生労働省のWebページに情報が掲載されているが、「吸入すると生命に危険」等の記載があり、他にも、「気道・肺障害」、「限局性呼吸器疾患」、「前眼部障害」、「鋭い眼の痛み」、「皮膚障害」など様々な健康障害を起こす化学物質とされている。
上述のホルムアルデヒドやイソシアネート類による健康被害は、有害化学物質による健康被害の中のほんの一例であり、この他にも、たくさんの有害化学物質による被害が研究・報告されている。
5.超微量でも有害な環境化学物質
先に述べたように、環境ホルモンと呼ばれる有害化学物質は、低用量で影響が出ることが実験研究で証明されている。それでは、科学者が問題にしている「低用量」というのは、どの程度の量であろうか。その点に関しては、シャナ・H・スワン氏は、著書において、有害化学物質が発達中の胎児に与える影響について、以下のように述べている。
直感的には、化学物質は高用量の場合にだけ問題となるように思えるかもしれない。だが実際には胎児は低用量の環境化学物質に敏感なのだ。これは胎児が小さく、速い速度で細胞分裂を生じているためである。ここで問題にしているのは、オリンピック用競泳プールにベビーオイルを一滴垂らすほどの量――ほとんど取るに足らない量である。それでも、妊娠中の女性――そしてお腹の中の発達中の赤ちゃん――が、胎児の生殖器系や神経(脳)が形成される敏感な時期に、ある種の化学物質に低用量で曝露されると、その影響は大きく、永久的なものになる可能性がある。
ある種の有害化学物質は、プールにオイル一滴という超微量であっても、人体に永久的な問題を引き起こす可能性があることを、私たちは理解しておく必要がある。
また、立花 隆氏も、超微量でも毒性化学物質が人体に重大な悪影響を与え得ることを指摘し、著書で以下のように論じている。
『ほんのちょっとしたケミカルな状況変化でとんでもないことが起きるのは、とくに受精卵が細胞分裂して個体ができあがっていく発生過程です。たとえば生殖系の発生過程で、一兆分の一のレベルで男性ホルモンや女性ホルモンが多すぎたり、少なすぎたりすると、生殖器の異常とか、大人になってからの性行動の異常が現われたりする。発生過程では沢山の遺伝子が複雑にからみあいながら、臓器の形成や行動のプログラミングが行なわれていくわけですが、その遺伝子のスイッチを入れるのがホルモンの役割で、それはほんの微量できく。しかも、適切なタイミングで適切な量が供給されることが必要で、それは本来なら内分泌系が自動的にやってくれるわけだけど、そこに環境ホルモンが入ってくると、それが本物のホルモンのまがいものとして働いて、入れるべからざる遺伝子のスイッチを入れたりして、その人の生殖系を生涯にわたって狂わせることになる。』
『発生過程で環境ホルモンが働くと生殖系がどれだけ狂ってしまうかはかなり明らかになってきたけど、同じことが、脳神経系や免疫系についても起きているはずです。免疫系の異常からは、アトピーとかアレルギー性疾患とか、ガンとかの問題が起きる。脳神経系の異常からは、いろんな行動異常、知的活動の異常、情動や意志、意欲の側面の異常といった現象が現われてくると考えられます。これもやはり、神経回路そのものができていく発生過程では、一兆分の一の濃度レベルで効いてしまう。』
人間のホルモン分泌は、適切なタイミングで適切な量が供給されることが必要であり、ホルモンを混乱させる有毒化学物質は、きわめて微量でも人体に重大な悪影響を与える可能性があるということである。
6.様々な有害化学物質による人体汚染
環境省が行っている、化学物質の人への曝露量モ ニタリング調査では、一般人ボランティアの血液や尿などを集めて、ダイオキシン・PCB・農薬・重金属などの有害な環境化学物質がどれだけ検出されるかを調査したものであり、下記ページに結果が公表されている。
調査結果では、膨大な化学物質が人体に入り込んでいることが判明したが、調査によって検出された物質のうち、いくつかについて、以下に記載する。
■残留性有機汚染物質(POPs類)
PCB、有機塩素系農薬などの有害な残留性有機汚染物質は、ほとんどが1950~1970年代を中心に大量に生産された合成化学物質である。現在では、ほとんど生産されていないが、環境中に放出された後は数十年たっても分解されないため、海洋などの環境中に残存する。そして、生態系の上位にいる魚に高濃度で蓄積し、人間の体内に取り込まれるという連鎖が未だに続いている。
■ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)、有機フッ素化合物(PFOS、PFOA)
難燃剤としてカーテンや車の内装などに多用されたPBDEや、テフロンや撥水剤として多用されてきたPFOS・PFOAは、生殖機能への影響や環境ホルモン作用が報告された。そのうえ、難分解性で残留性有機汚染物質類に指定されて、現在は生産が自粛されている。
■農薬
有機リン系、ピレスロイド系殺虫剤などの代謝物が日本人の尿中に見つかっている。農薬については慢性神経毒性、発達神経毒性などが懸念されている。
■ビスフェノールA(BPA)・フタル酸エステルなどのプラスチック原材料
これらの物質には環境ホルモン作用が報告されている。
■殺菌剤トリクロサロン
殺菌用石鹸や歯磨き、化粧品などに多用されてきたが、2016年に環境ホルモン作用などの懸念からアメリカでトリクロサロンを含有する石鹸が販売禁止になった。その後、日本の厚生労働省が健康には問題ないと但し書きをつけたうえで、トリクロサロンを代替品に変えるように通達を発出し、現在では自粛されてきている。
■水銀
水銀は化学工場やゴミ焼却施設、石炭火力発電所などから排出され、皮膚や呼吸器を通して人体に入る。また、海や川、土壌、地下水などに落ちた水銀は、水や植物、魚介類を通じて人体に入っている。水銀は、心臓や循環器への悪影響や、アレルギー・自閉症の発生原因になることが懸念されている。
7.高度な生命維持システムと人間の貧弱な知識
それでは、このように生物の生命・健康を脅かす、危機的な状況を招いた原因は何であろうか。前述の「奪われし未来」では、高度な技術力と生命維持システムについての貧弱な知識という、人間のバランスを欠いた能力が危機を招いたと主張しているが、その通りであろう。
以前の記事で述べたとおり、動植物が持つ、種々の奇跡のような能力は、人間が英知を結集して作った機械の能力を凌駕しており、生物の生命の仕組みについては、現在の科学で解明されたことよりも解明されていないことの方が圧倒的に多い。今、地球上で最も単純な構造の単細胞生物でさえ、自動車の構造より遥かに複雑であると言われているが、万物の霊長たる人間の身体は当然、単細胞生物よりも複雑に構成されており、人間の知覚機能の一端を垣間見るだけでも、身体機能が驚くほど精巧な構造であることが分かる。人体は言わば奇跡のかたまりであり、例えば、視覚・聴覚・嗅覚の知覚の仕組みは以下のとおりである。
■聴覚の知覚構造
内耳にある毛細胞組織が大気圧の10億分の1未満の微小な圧力変化を感知し、聴覚神経信号を発し、様々な音を聞き分けている。
■視覚の知覚構造
網膜組織が目に入った光子を微弱な電流に変換し、それが視神経を経て脳の神経組織に到達する。
人間の網膜は約1億個の神経細胞が並ぶ薄板で、コンピューターによって人間の網膜と同等の網膜システムをつくろうとすると、コンピューターに毎秒10億の演算を実行させる必要があるという。
■嗅覚の知覚構造
以前の記事で詳しく紹介したように、約300個の嗅覚受容体遺伝子によって、およそ1万種類の匂いを嗅ぎ分けている。
このような身体の組織が行っている芸当は、人間が作り出した機械の能力をはるかに上回っている。
近年の科学技術の発展は目覚ましかったが、生物の生命の仕組みは、人間の科学技術よりも、はるかに精巧なシステムであり、人間の生命維持システムについての貧弱な知識では、化学物質が生命に与える影響を予測することはできなかった。有害化学物質による健康被害は、人間が理解できないような、超絶に高度な仕組みの「自然」を変更してしまい、失敗した結果と評価できるであろう。
人類の幸福と生存にとって重要なことは、この先いかに科学技術が発達しようとも、人間が解明できていないことが膨大にあると悟る知恵だろう。この心得がなかったために人類は、かつてない危機に瀕している。
8.持続可能な地球環境の回復に向けて
資本主義は、科学技術を発達させて物質的な豊かさをもたらしたと言われるが、その一方で、この1世紀ほどの資本主義は猛烈な勢いで自然環境を破壊してしまった。前回の記事・今回の記事で述べたように、有害化学物質により様々な小動物や昆虫が姿を消して生態系は破壊され、自然環境は汚染された。そして、人間を含めた生物に健康被害が発生している。このような地球環境の悪化と、生物の身体への悪影響を鑑みると、現在の資本主義経済は方向転換が必要なことは明らかである。美しい自然と豊かな動植物・微生物環境を回復させることは、人類の福利につながるのであるから、人工化学物質を規制し、環境保全の事業を発展させる方向に進むべきであろう。
※参考文献
「奪われし未来」シーア・コルボーン (著)、 ダイアン・ドゥマノスキー (著)、 ジョン・ピーターソン・マイヤーズ (著)、長尾 力 (訳), 堀 千恵子 (訳)
「生殖危機 化学物質がヒトの生殖能力を奪う」シャナ・H・スワン(著)、ステイシー・コリーノ (著)、 野口 正雄 (訳)
「有害化学物質の話」井田 徹治
「重金属体内汚染の真実」大森 隆史
「量子で読み解く生命・宇宙・時間」吉田 伸夫
「地球をめぐる不都合な物質」日本環境化学会
「プラスチック汚染とは何か」枝廣 淳子
「知らずに食べていませんか?ネオニコチノイド」水野 玲子
「なぜ世界の半分が飢えるのか 食糧危機の構造」スーザン・ジョージ (著)、小南 祐一郎・谷口 真里子 (訳)
「地球を脅かす化学物質」木村 - 黒田 純子
「環境ホルモン入門」立花 隆 (著)、東京大学教養学部立花隆ゼミ (著)
「犯罪に向かう脳」アン モア (著)、デビッド ジェセル (著)、藤井 留美 (訳)
「使うな、危険!」小若 順一
「沈黙の春」レイチェル・カーソン(著)、青樹 簗一(訳)
