Photo by
nakiusagi44
《詩》 白百合
小高い丘を上がると、白い百合の群生があった。
その脇には蒲の穂が細く列を成している。
塩辛蜻蛉が唐突に眼前を掠めていく。
空は用意されたように青く、
平たく斑に敷かれた雲は、
斜めから差す陽に、立体を浮き上がらせている。
不法投棄された雲梯のペンキは剥げ、
錆に蔓が巻き付いている。
空間を埋める虫の鳴き声は、拍動と同期し、
そのうち感知できなくなった。
風が吹く。
生ぬるい湿り気を帯びた空気は低い位置で滞留し、
百合は揺れない。
去年と僅かに違う、配置、数。
去年と僅かに違う、草の香り、夏が終わる途中。
伸びた爪を見る。
小さなドローンが高く上がっていく。
帰ってから再び百合を思い出そうと、する。
去年より増えた、濃い白百合。
他には何も、私もいない。
まだ夏が終わる途中。
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