10年ぶりに会う彼女
目が覚めて、しばらく天井の隅を見ていた。
壁際だけ一段低くなった天井の角を視線でなぞり、目を閉じると、背中がじんわり汗ばんでいた。
今日は朝から地元の友人と遊び、帰ってきてそのままソファで寝てしまった。
十年ぶりに会った友人は、やっぱり天真爛漫で、早口で、よく笑いながら話し続けた。
「どうしてひとみはそんなに行動できるの?!
しかもちゃんと実現させて。なんで?!」
勢いよくそう聞いたあとも、彼女の話は止まらない。
私は答える間もなく、彼女の話に惹き込まれ、ずっと笑っていた。
原爆ドーム前から平和記念公園をまわって、カフェに入ってお茶をした。
彼女は、私が制服のワンピースを切ってスカートにしたときのことや、啖呵を切ったときのセリフまでよく覚えていた。
見慣れた広島に彼女がいて、埼玉にいた頃の私たちの話をしている。
昔の私だけでなく、数ヶ月前の私でさえ今の私と地続きだという感覚が薄い私にとって、自分の話を聞いているはずなのに、誰かのあたたかい物語を聞かせてもらっているようだった。
最後は、「私、最近パラレルワールドが気になってしょうがない」と彼女が話し出し、二人で盛り上がって別れた。
日は傾き、ほのかに黄色みを帯びた薄暗さが部屋に入っている。
クーラーの低くくぐもった音の向こうで、ツクツクホーシがかすかに鳴いている。
今私は何歳で、どこで何をしているのか一瞬分からなくなる。
カフェのざわめきが戻ってくる。
「私たちは、パッパッパって瞬間ずつ、層を行き来してるんだよ。大きな選択だけでなくて、今、右手を上げるか、上げないかとか、そういう小さな選択のたびに、選ばなかった方の世界もある」
「えー!じゃあ私は何人もいるってこと?!じゃあ娘は?娘を産まなかったら、娘の人生はない世界線がある?あー、分からなくなってきた」
「さっき話した次元の話に繋がるんだって。一次元は線、二次元は縦横、三次元は縦横に高さが加わる。四次元では、過去、現在、未来がすべて一つの時空に含まれていて、時間が流れるという捉え方じゃないんだって」
「っていうかなんでこの話、ひとみに通じるの?!」
友人の驚いた顔を見ながらソファから起き上がった。
