いちじくに片想い
夏の終わりから秋の始まりは、スーパーの入り口においしい果物がたくさん並んでいて、うれしい。
りんごに梨、ぶどう、それからいちじく。
どれもおいしいけれど、私が特に好きなのはいちじくだ。
母が好きで、実家にいる頃からよく食べていた。
近所のスーパーには、朝採れのいちじくがパックに入って並んでいる。
いちじくに限ったことではないけれど、果物を買い物かごへ入れるときには、いつも少し悩む。
果物は、あればとってもうれしいけれど、なくても食卓はなんとかなる。
それでも。
旬のものだしね。
今のうちに食べとかなきゃね。
そう自分に言い聞かせて、そっとかごへ入れる。
最近のインスタグラムのおすすめには、いちじくを使った料理ばかりが並んでいる。
いちじくを使ったサラダや、マリネや、春巻きまで。
なんでいちじく好きなことがバレたんだろう。
無意識に、いちじく料理にハートを贈りまくっていたようだ。
いちじくの果肉はとても柔らかいので、崩してしまわないように、赤紫色の皮をそっと剥く。
手で皮を剥くと、白くてふわっとした果肉が表れる。
そのまま、ぱくっと頬張ってもおいしい。
4つ割りにして、チーズや生ハムと合わせるのも、とてもおいしい。
ワインが欲しくなるやつ。
毎日でも食べたい。
食べたいのだけれど。
私は、いちじくを触ると、手がとても痒くなる。
皮を剥いて、すぐに石けんで手を洗う。
それでも、100%痒くなる。
いちじくだけではない。
茹でたほうれん草をぎゅっと絞ったり、なすを塩もみして絞ったりしても、痒くなることがある。
どうやら私は、皮膚があまり強くないらしい。
いちじく、大好きなんだけどなあ。
だから、私はいちじくを週末に買うことにしている。
週末なら、夫に剥いてもらうことができるからだ。
一緒にスーパーへ行って、いちじくの前で立ち止まる。
「買ってもいい?剥いてくれる?」
断られることはないのだけれど、一応しおらしくお願いしてみる。
帰って、夜ごはんの支度をする。
あとはいちじくだけ、というところで夫を呼び、いちじくを剝いてもらう。
「全部剥いていいの?」
と聞かれるので、
「いいけど、1個はお皿の中じゃなくて、私の口に放り込んで」
そう言って、食事の前だけれど、いちじくをひとつ頬張る。
はあー、これこれ。
これが食べたかった。
いちじくへの片想いは、夫のアシストにより成就する。
