「何をしたらいいかわからない」ってそんなに悪いこと?
「最近、疲れが取れないんです」
「何をしたらいいですか?」
身体のことを相談されたとき、
よく出てくる言葉です。
でも、私はこの
「何をしたらいいか分からない」
という言葉を、
そんなに悪いことだとは思っていません。
むしろ、そこから始めても
いいんじゃないかと思っています。
今は、身体のための情報が
本当にたくさんあります。
疲れたら、睡眠。
運動不足なら、ウォーキング。
筋力が落ちたなら、筋トレ。
身体が硬いなら、ストレッチ。
呼吸が浅いなら、呼吸法。
更年期なら、ホルモンや食事、運動。
痩せたいなら、食事管理や有酸素運動。
調べれば、いくらでも方法が出てきます。
だからこそ、
「これをやればいい」
という答えが見つからないと、
自分は何も分かっていないような気がする。
そんなこともあるのかもしれません。

でも、
方法を知ることと、
自分の身体が分かることは、
同じではありません。
たとえば、
「身体が硬い」
と言われたとします。
じゃあ、
どこが硬いんでしょう?
どこから動いている?
動かすと、どこに力が入る?
呼吸はどうなる?
左右で違いはある?
本人は、その違いを感じている?
「身体が硬い」という一言だけでは、
ここまでは分かりません。
私自身も、
身体を扱う仕事をしてきたからといって
いつも自分の身体のことが
分かっているわけではありません。
太極拳などをしていると
「そこ、力入ってるよ」
と言われることがあります。
「え?力、入れてないけど😂」
と思う。
でも、動きを少し変えてみる。
すると、
「あ、これか」
となる。
自分では力を入れているつもりがなくても
実際の身体には力が入っている。
形はできていても
重心や呼吸、力の入り方が違う。
そんなことがあります。
以前、80歳の方と、椅子に座って
身体を丸めたり反らしたりする動きを
していました。
いわゆる
「キャット&カウ」のような動きです。
最初は、腰を大きく動かしていました。
形だけを見れば、
「もっと背中を動かしましょう」
と伝えることもできます。
でも、私が見たかったのは、
形だけではありませんでした。
肩に力が入っていないか。
どこに体重がかかっているか。
呼吸はどうなっているか。
本人は何を感じているか。
動いたあと、身体はどう反応しているか。
少し調整していくと、その方が、
「私、いつも肩に力が入りすぎてたんや」
と気づかれました。
そのあと、動きが変わりました。
私が「正しい形」を教えたからではありません。
本人が、
「あ、自分の身体って、こうなってたんだ」
と分かったからです。

ここが、私が身体を見るときに
大切にしているところです。
「できるか、できないか」
だけではなく、
「どうやってやっているのか」
を見る。
そして、
「今、この身体では何が起きているんだろう?」
と見る。
だから私は、
「筋トレをしましょう」
とか、
「ウォーキングがいいですよ」
とか、
「ストレッチをしてください」
という方法を否定したいわけではありません。
必要な人には、必要な方法があります。
ただ、
方法を選ぶ前に、自分の身体を見る。
この順番があってもいいと思っています。
「最近疲れる」
なら、
いつから?
朝から?
仕事のあと?
動いたあと?
寝ても残る?
休むと戻る?
何をすると楽になる?
どこが一番しんどい?
そんなふうに見ていく。
「身体が硬い」
なら、
どこが?
いつ硬い?
動くとどうなる?
呼吸は?
左右差は?
力みは?
そんなふうに見ていく。
もしかすると、
「何をしたらいいか分からない」
というのは、
まだ自分の身体を
見ていないからなのかもしれません。
そして、それは悪いことではありません。
むしろ、
「分からない」から、
身体を見ることができる。
私はそう思っています。

身体についての知識が増えても、
健康情報をたくさん知っていても、
誰かに「これが原因です」と教えてもらっても、
それだけで、
自分の身体が分かるわけではありません。
「更年期だから」
「歳だから」
「運動不足だから」
「筋力が落ちたから」
「姿勢が悪いから」
そういう理由が、
実際に関係していることもあります。
でも、
理由が分かったことと、
身体が分かったことは違う。
理由を見つけたところで、
もう一度、
「……で、今の身体は?」
と見てみる。
身体は、毎日違います。
同じ人でも、
昨日と今日では違う。
朝と夜でも違う。
仕事をした日と、休みの日でも違う。
だから、
一度決めた理由だけで、
自分の身体を決めなくてもいい。

「何をしたらいいか分からない」
そんなときは、
すぐに答えを探さなくても
いいのかもしれません。
まず、
自分の身体をちょっと見てみる。
何が起きている?
いつから?
どんなとき?
どうすると変わる?
そして、
その身体に必要なことを選んでいく。
やってみて、
また身体を見る。
私は、
「これをやれば健康になれます」
という答えを渡したいわけではありません。
自分の身体に起きていることを、
自分でも少しずつ分かるようになってほしい。
そのために、
身体を見る。
必要なことを選ぶ。
身体の反応を見る。
また身体を見る。
そんな循環を作っていきたいと思っています。
だから、
「何をしたらいいか分からない」
は、そんなに悪いことじゃない。
もしかしたらそれは、
自分の身体を見ることが
始まる場所なのかもしれません。
身体を変える前に、身体を見る。
私は、
自分の身体を、
「あ、今日はこんな感じやな」と
分かるように、感じれるように
なる人を増やしたい。
