名前を呼ばれると、少しだけ振り向き方が変わる。
「ねえ」
と呼ばれる。
振り向く。
「○○さん」
と呼ばれる。
振り向く。
同じように振り向いているのに、
なぜか少し違う。
名前って、
不思議だ。
「ねえ」でも、
ちゃんと自分に向けられた声だと分かる。
でも、
「○○さん」
と呼ばれると、
少しだけ、
自分に近づいてくる感じがする。
以前、
久しぶりに会った人に、
「○○さん」
と呼ばれた。
もう忘れられているかもしれない。
そう思っていたから、
「あ、覚えていてくれたんだ」
と、少し嬉しかった。
それだけだった。
でも、帰り道。
さっき呼ばれた自分の名前が、
ふと浮かんだ。
夜。
窓を少し開ける。
昼間はたくさんあった声が、
少しずつ遠くなっていく。
今日、
誰かに呼ばれた自分の名前を思い出す。
ほんの一言だったのに。
少しだけ、
心がゆるむ。
名前を呼ばれると、
少しだけ振り向き方が変わる。
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