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ここのねこ様「みんなで歌う縄文土器たち」破片解説

先月に引き続き、ここのねこ様から上記記事で縄文土器の破片の写真を提示頂きました。10年位前に関東の試掘調査現場で撮られた写真とのことです。わかる範囲でこれらの破片に解説を加えてみたいと思います。

拡大写真A(ここのねこ様 記事より引用。符号は筆者)
拡大写真B(ここのねこ様 記事より引用。符号は筆者)

前期前半 羽状縄文土器

破片A1は縄文の縄目の方向が破片の途中で切り替わっていることから、縄文時代前期前半、関山式土器などの羽状縄文土器だと思われます。撚りの向きが逆の2種類の縄を組み合わせて器面を転がすことで、鳥の羽根のような模様を作ります。また破片B4, B7も関山式などでよく使われる装飾を付けた破片のようです。B4はヘラで引いた平行の沈線の間を短い沈線で結ぶ梯子状沈線文と、小さな粘土の玉を貼り付ける貼瘤です。またB7は半截竹管(半分に割った竹)や櫛状工具を互い違いに回転させて半円が連なった模様を付けるコンパス文のある破片です。
関山式など羽状縄文系の土器は、材料の粘土に植物の繊維や動物の毛などの繊維が混ぜ込みます。乾燥や焼成のとき割れにくくするためと考えられています。この写真では分かりにくいですが、焼き上げるとき繊維が炭化して、破片の割れ口が黒っぽくなります。それで繊維を混ぜ込んでいない、次の時期の諸磯式土器などとの区別がつきます。

羽状縄文の破片と関山式土器(群馬県渋川市 半田南原遺跡)

前期後半 諸磯式土器

破片の中には前期後半の諸磯式土器のさまざまな段階と思われる破片が多数含まれていました。破片B2は竹管文と沈線で「米」の字に似た文様を描く米字文のように見えます。米字文は諸磯a式の古段階の土器でよく用いられました。

米字文の破片と諸磯a式(古)土器(千葉県市川市 中台貝塚)

また、半截竹管の腹を押し付けて押引きにより付ける爪形文をもつ破片もたくさんあります。爪形文の幅や爪形の目の粗さもさまざまです。諸磯b式の古段階の土器は、幅広の爪形文で蕨手文や弧線文を描くのが特徴です。破片B12は爪形文による弧線文の一部のように見えます。

弧線文の諸磯b式(古)土器(千葉県市川市 上台貝塚)

諸磯式土器では木葉文(入組木葉文)もよく用いられます。爪形文や平行沈線で描かれた木の葉のような形の区画が互い違いに入り組みます。破片B9は爪形文、B10は平行沈線で描かれた木の葉形の一部のようです。

入組木葉文の諸磯b式土器(東京都北区 七社神社前遺跡)
入組木葉文の諸磯b式土器(東京都北区 七社神社前遺跡)

諸磯b式土器の中段階になると、細い粘土紐を貼り付けて文様を描く浮線文が現れます。文様も大幅に変わり、渦巻文や蕨手文が描かれるようになります。浮線文の粘土紐には斜め方向に沈線の刻みが入れられます。破片B3, B5, B8がこれに相当します。この時期にはイノシシの獣面突起をもつ諸磯b式土器が出現します。

諸磯b式土器 中段階(群馬県安中市 中野谷松原遺跡)

中期の土器

破片A2, A3, A5は太い粘土紐を隆帯として貼り付けて、厚手の器壁としっかり一体化するように処理しています。大ざっぱですが、そうした特徴から縄文時代中期の土器の口縁部区画などの破片ではないかという印象を持ちました。

中期の土器と思われる破片

破片A4も中期の土器だと思いますが、段々になった細い溝(沈線)があります。これはヘラ工具を押し引きして付けた有節沈線です。阿玉台式土器や勝坂式土器など中期中葉の土器では、しばしば角押文といって隆帯の区画に沿った有節沈線を施します。角押文の本数や形状で土器が作られた時期を細かく分けることができます。

有節沈線のある破片と阿玉台式土器
(茨城県鹿嶋市 厨台遺跡群)

北から来た土器?

破片B13はちょっと気になる土器です。確信は持てませんが、東北南部の大木式土器を疑いました。縄文時代前期の大木4式か5式です。細い波状の粘土紐を貼り付けて、上から押さえて平たくした感じが似ているように思いました。もしそうならはるばる東北から関東に渡来した文様ということになります。

大木4式・5式土器の破片
(宮城県七ヶ浜町 大木囲貝塚)

補修孔

破片B11には貫通する穴が開いています。これは補修孔だと思います。縄文土器の口縁付近などにひびがはいると、ひびの両側に補修孔を開け紐で縛って使い続けたそうです。右はあとの時代の例ですが、補修孔のある後期の堀之内式土器です。

補修孔のある縄文土器
(後期前半 堀之内式土器 群馬県長野原町 林中原Ⅱ遺跡)

写真のうち半分くらいしか分かりませんでしたが、破片を見てあれこれ想像するのは楽しい作業でした。出題頂いたここのねこ様に深く感謝いたします。
最後までお読み頂きどうもありがとうございました。

#縄文 #土器 #発掘

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