GHOST HOUSE考察
MVを見て、ある映画を思い出した。
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』。
トム・クルーズとブラッド・ピットが演じる二人の吸血鬼。
永遠の命を繰り返す中で抱える孤独や執着、愛憎を、妖しく耽美な映像で描いた名作だ。
あらすじ
冷酷で享楽的な吸血鬼レスタト(トム・クルーズ)は、美しい青年ルイ(ブラッド・ピット)に自らの血を与え、永遠の命へと誘う。
しかしルイは、吸血鬼となった後も人間としての心を捨てきれず、吸血鬼としての生き方に最後まで葛藤し続ける。
やがて二人の前に美しい少女クローディアが現れたことで、二人の関係は大きく揺らぎ始める。
愛情、執着、共依存――。
本作は、友情でも恋愛でも敵対でも言い表せない、複雑で危うい二人の絆を核に描かれた、吸血鬼映画の金字塔である。
『GHOST HOUSE』のMVには、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』を思わせる構造が随所に見られる。
吸血鬼という古典的なモチーフと、二人の美しい男性が織りなす妖しく耽美な世界観。
映画の構造を一部手がかりにしながらも、ROIROMならではの物語へと再構築しているように感じた。
例えば、ロイのメンバーカラーである「銀」。
吸血鬼伝承において銀は、浄化や純粋さを象徴する一方で、吸血鬼を退ける力を持つ金属でもある。
その「銀」を背負うロイは、完全な闇には染まりきらず、人間らしさをどこかに残したルイ(ブラット・ピット)と重なる。
一方の大夢は、人間を翻弄し、舞台の中心で世界を支配するレスタト(トム・クルーズ)を思わせる。
その視点でMVを見返したとき、この作品が描こうとしている物語が少しずつ輪郭を帯び始めた。
正直に言うと、今回の考察は今までで一番難しかった。
これまでは「神話」という、すでに存在する確定した物語を手がかりに読み解くことができた。
しかし今回は、一つの映像作品として存在しているゆえ、見る人の数だけ解釈が発生する。
この考察も公式の見解ではなく、あくまで私が映像から受け取った一つの物語にすぎません。
そんな、いちオタクの解釈として、楽しんでもらえたら嬉しいです。
MVにおける大夢とロイの関係性を示唆するモチーフは随所に散りばめられている。

永遠の命を生きる吸血鬼として、終わることのない愛の循環を思わせるピンクの満月。

「お似合いのふたり」という花言葉を持つデンファレ。
花の中に牙を付ける演出は、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』でレスタトがルイを噛み、血を分け与えることで眷属として永遠の命を授ける場面を想起させる。

一本の木に雄花・雌花・両性花をつけるパパイヤ。性別や境界を超えた多様性を象徴する。
こうしたモチーフが繰り返し映し出されることで、2人の狂おしいまでの、長くて密接な関係性が示されていく。
ずっと二人で暮らしてきたのだ。
たった二人で、何百年も。
その世界が、一人の女性の登場によって揺るがされていく。
白い館への侵入者
物語は、森の中で女性が木に車が衝突しているシーンから始まる。

助けを呼ぼうと携帯を取り出すが、画面には「Non-Service Area(圏外)」の文字。そして左上には、コウモリに似たアイコンが表示されている。
コウモリは古くから「死と再生」の象徴として語られ、女性が事故を境に現世との境界を越え、死後の世界へ足を踏み入れたことを暗示している。
"しかし、当の本人はまだ、自分が幽霊になったことに気づいていない。"
女性は助けを求め、白い館へたどり着く。
そこは吸血鬼である大夢とロイが2人で静かに暮らす世界だった。
事故を境に現世との境界を越えた彼女は、シームレスに彼等の世界へ入り込んでしまう。
その瞬間から、『GHOST HOUSE』の物語は動き始めるのである。
幽霊に恋する少年
大夢とロイは、女性の存在に興味を示す。
しかし、女性と吸血鬼の世界はまだ完全に重なっていないから女性からは2人が見えていない。
そこでロイは、火を灯す。

この「火」というモチーフは、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』においても、"関係性の転換"を示す重要な演出として使われている。
ルイ(ブラット・ピット)は、美しい少女クローディアと新たな人生を歩むため、レスタト(トム・クルーズ)との関係に終止符を打つべく館に火を放ったのだ。
"火は、これまでの関係を焼き払い、新しい道へ進む決意の象徴"
ロイが火をつけると幽霊と吸血鬼の世界が交わり、お互いを認識できるようになる。
ロイが女性(幽霊)に恋をしたことで、世界の均衡が崩れ始めるのだ。
永遠の命への覚醒
ロイは棺へ入る。

吸血鬼にとって棺は、ただ眠るための場所ではない。力を回復し、本来の姿へ還るための聖域である。
そしてロイが棺から目覚めた直後、大夢に不思議な変化が起こる。
ロイの後ろで一瞬ゾンビのようなムーブをした後(1:15)、鏡に映らなくなってしまったのだ。
まるでロイの覚醒をきっかけに、大夢の中に眠っていた吸血鬼としての力もさらに強固になったかのように。
火を灯した時に、一度は幽霊へと心が揺らいだロイ。
しかし棺から目覚めたロイが選んだのは、幽霊ではなく大夢だった。
この瞬間を境に、大夢とロイは同じ「永遠を生きる者」として並び立つ。
ロイは迷いを捨て、大夢と共に永遠を生きることを選んだのだ。
劇場の中央へ進み、堂々と踊り狂う二人。

それは吸血鬼としての完成を示す場面であると同時に、「ショーマン・ROIROM」の誕生を告げる瞬間。
優れた作品が時代を超えて永遠に語り継がれるように。
ROIROMもまた、作品の中で永遠に残る表現者として歩み始めたのだ。
その劇場の世界に女性が現れる。
ロイはそっと白いバラを差し出す。

白いバラの花言葉の一つは「新たな始まり」。
それは吸血鬼として、そしてショーマンとして新たな段階へ進んだ大夢とロイを象徴する花言葉。
「ここから先は、二人だけの世界。」
「生まれ変わった自分たちの世界へはもう踏み込まないでほしい」
そんな静かな決意を込めて白いバラを差し出したのだ。
そして、ここからがMV最大のトリック。
女性は走る。
しかし、吸血鬼は、女性を追いかけていない。

瞬間移動できる吸血鬼なら、捕まえることなど容易なはずだ。
それでも二人は女性を驚かせるだけで、決して手を伸ばさない。
なぜなら、女性は二人の世界へ偶然迷い込んでしまった"侵入者"だから。
侵入者が無事脱出できるよう、その道筋を作っているだけなのだ。
そして二人は、館を小さく折り畳む。
もう誰も入らせないために。

『GHOST HOUSE』とは、白い館という建物の名前ではない。
大夢とロイ――。
二人が築き、守り続けてきた「永遠の関係性」そのものを指す"概念"なのだ。
「はじめようか 二人だけで。」
その言葉どおり、二人だけで生きていくことを決めた。
『CLASSIC WAVE』のROIROM創生物語は、『GHOST HOUSE』で永遠の命を得る、終わることのない物語へと昇華した。
このMVは、ROIROMがショーマンとして新たなフェーズへ踏み出したことを告げる、一つの宣言なのかもしれない。
最後の仕掛け
ラストシーン。
吸血鬼は、本来鏡に映らない。
しかし車内のバックミラーにはROIROMの姿が映りこむ。

─もし車の外が死後の世界、車の中が現世を表しているのだとすれば。
彼女の目に映る二人は、実は吸血鬼ではない。
現実世界で生きるショーマン・ROIROMなのである。
死後の世界では永遠を生きる吸血鬼として。
そして現実世界では、人々の記憶に残り続ける表現者として。
本多大夢と浜川路己は、このMVで二つの「永遠」を手に入れたのかもしれない。
