人気ラーメン屋にあって、退屈な文章にないもの──人を惹きつけるnoteの書き方《今週の三題噺発表》
行列のできる人気ラーメン屋には、不思議な静けさがある。あれだけ人を夢中にさせているのに、店の前で誰もゲラゲラ笑っていない。そこがずっと少し気になっていた。
めちゃくちゃ美味しい店に並ぶ。やっと入る。湯気が立つラーメン丼が置かれる。食べる。うまい。かなりうまい。箸がとまらない。
ここでもっと大騒ぎしてもよさそうなのに、案外そうならない。拍手もない。爆笑もない。せいぜい「うま……」とか「やばい」とか、せいぜいそのへんで。顔はたしかに少しゆるんでいる。でもテーマパークみたいな笑顔ではない。もっと静かで、もっと一点に集中している。
おもしろい文章と言うと、つい人を笑わせることばかり考えたくなる。クスクスさせたい、できれば爆笑させたい、読んだ瞬間に「やられた」と思わせたい。
もちろんそれも大事だけど、ほんとうに強い文章って、いつも笑いを起こすものばかりではない。読んだ人の顔が少しだけ止まるとか、ニヤッとするとか、なんだか景色が残るとか、そういう刺さり方のほうが多い。
どんなに美味しい料理でも人はクスクス笑ったり爆笑したりはしない。
でも、うまいものはまた食べたくなる。
ここが大事なのだと思う。
文章も同じで、派手に笑わせることだけが価値ではない。読んだあとに、もう一回あの感じを味わいたいと思わせることのほうが強い。
文章の目標は「笑い」だけではなく「反復したくなる体験」に近いのかもしれない。
人気ラーメン屋には五感がある。
まず匂い。店の前に立った時点ですでに少し負けている。次に音。麺をすする音、厨房の湯切り、皿のぶつかる音、店員の喧騒。そのあと熱。湯気。口の中の温度。舌に触れるスープ。のどを落ちる感触。人はそこで、ただ味を食べているのではなく、体験全体を食べている。だからまた来る。
文章もそこを目指したほうがいいのではないか。
意味だけを伝えるのではなく、五感で読ませる。景色を立ち上げる。温度を出す。距離感を出す。読者の頭の中に小さな映画を流す。これがあると文章は説明から体験に変わる。
逆に情報だけが並んでいる文章は、たとえ内容が正しくてもどこか味気ない。コンビニのおにぎりの袋の裏に書いてある説明文みたいに必要なことはわかるけれど、もう一回読みたくはなりにくい。
よくある失敗も見えてくる。
記事を書いていると、つい全部説明したくなる。なぜおもしろいのか、なぜ悲しいのか、なぜ腹が立つのか。いちいち言いたくなる。宿題を持ってくるの忘れたという嘘を必死で本当らしく見せようとする中学生みたいに、細部を盛りすぎる。するとかえって嘘っぽくなる。文章も同じだ。説明しすぎると読者の舌が入る隙がなくなる。味わう前に全部こちらがしゃべってしまう。
人気ラーメン屋は泣き寝入りしない。
「うちのスープ、ほんとはこういう工夫がすごいんです」「このチャーシューには哲学があって」などと長々説明せず、まず丼を置いてくる。食ってみろ。そこは見習いたい。理屈はあとでいい。まず景色を出す。湯気を出す。読者の口の中に少しだけ温度を置く。そのほうが伝わる。
もちろん文章はラーメンではない。食べれば終わりでもない。けど、人気ラーメン屋から学べることはかなり多い。
一つは、また来たくなることが最強だということ。
もう一つは、爆笑よりもニヤッのほうが案外強いこと。
そしてもう一つは、五感で味わえるものが残るということ。
文章は意味だけで読まれるのではなく、体験として記憶される。
どんな匂いがしたか。どんな温度だったか。どんな顔でその人がそこにいたか。
そこまで出てくると、ただの説明文ではなくなる。
ラーメン屋だと味の感想を超えて「またあの店に行きたい」になる。文章で言えば、「またこの人を読みたい」になる。
情報を見すぎて目も頭もつかれている眼精疲労な時代だからこそ、文章に必要なのは、説明の量ではなく、味わえる景色なのかもしれない。
読むことが作業になると人はすぐ離れる。
でも五感で読めるものは、少し立ち止まる。
立ち止まって、ニヤッとする。
そして、また来る。
そんなものを書けたら、読む人の舌も心も、ちゃんと動く。
《前回の三題噺》
1.泣き寝入り
2.宿題を持ってくるの忘れたという嘘
3.眼精疲労
説明しよう!三題噺とは、まったく関係のない3つの言葉を強引にひとつの話にまとめる文章遊びであーる。頭をフル回転させながら、「どうつなげる?」「オチどうする?」という落語的プレッシャーが味わえます。エピソード構成力、語彙力、そして無茶ぶり耐性まで育つ、文章版・筋トレRPG。それが三題噺。やってみなきゃ、もったいない!
《今週の三題噺》
1.電池切れのリモコン
2.文房具好き
3.スイートポテト
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