風鈴の短冊に、棒人間を住まわせる | スキ動画コンテスト「夏の陣」
夏を知らせるものはいくつもあるけれど、風鈴だけは昔から少し特別な存在。
丸いガラスの中に、小さな舌。
その下に紙が一枚。
風が運んでくる澄んだ音。
透明なものから透明な音が出る。
小さな頃から、形から音まで、心を鷲掴みにされている。
だから「夏の陣」という言葉を見た時、題材は決まったようなものだった。
ただ、風鈴は放っておくと、だいたい詩になる。
静かな縁側に、白いカーテン。遠くには入道雲があり、そこへ「ちりん」と一音添えれば、もう立派な夏の情景。
何もしなくても絵になるものを、今回もきれいに眺めて終わるのか。
それでは、少し物足りない。
スキを押してくれた人へ返す、短い「ありがとう」。
そのための仕掛けを探しているうちに、風鈴の下で揺れている短冊が気になり始めた。
短冊に「ありがとう」と書くのは素直すぎる。
では、何かを隠してみようか。
いっそのこと、棒人間を住まわせてしまおう。
このあたりから、風鈴の情緒が少し怪しくなってくる。
風が吹けば短冊は揺れる。
そこに棒人間が住んでいたら、どうなるだろう。
たぶん、落っこちる。
落っこちるなら、パラシュートが要る。
開いた傘に「ありがとう」と書いておけば、最後にはちゃんとお礼にもなる。
風鈴から始まった連想は、短冊へ、棒人間へ、落下へ、パラシュートへ。
そうして転がった先に、今回の10秒がある。
コンテストに応募するのは、この動画です。

この流れの中で、どうしても外せなかったもの。
コミカルさを伝えるためには、絶対に必要になる1拍。
落ちて、すぐパラシュートを開いてしまえば、出来事は手順のように、何事もなく通り過ぎる。
短冊から、ふいっと外れる。
宙で一瞬、
「あっ」
風鈴の情緒と棒人間の可笑しさが、ようやく同じ画面に収まった。
動きを足すのではなく、動きを抑えることによっての面白さ。
この間が作品に命をあたえていると思っています。
イラストのテイストにも、こだわっています。
ガラスの透明感を繊細に描けば、風鈴はまたきれいな情景に戻ってしまう。
今回ほしいのは、詩ではない。
太く、荒く、少しかすれた筆の線。
それが情緒と可笑しさの丁度よい塩梅。
まるい風鈴も、細長い短冊も、小さな棒人間も、黒と灰色の勢いの中へ放り込んだ。
黒い線の中へ埋もれず、「ありがとう」が開いた瞬間に目へ入る。
それには朱色しかないと、荒い筆との相性もいい。
念のためAIにも聞いてみると、返ってきた答えも朱色。
ここについては、相談するまでもなかったらしい。
まぁ他の色すすめてきたところで、AIはやっぱり、わかってないなと朱色を使ったけど。
大好きな風鈴を題材にしながら、涼やかに鳴らして終わるのではなく、短冊から棒人間を落っことす。
詩的な夏の道具と、なんとも頼りない棒人間。その間に挟まった「あっ」の一拍まで、楽しんでもらえたらうれしいです。
ナオユキさん、すてきな企画をありがとうございます。
募集記事はこちらです。
🌻第2回スキ動画コンテスト「夏の陣」開幕!5秒のおもてなし動画で夏を楽しもう!
