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いまどき<ラブコメ>はオワコン化しつつあるのか?

今回の表題は、「いまどき<ラブコメ>はオワコン化しつつあるのか?」というものなんだが、まぁ結論から率直にいっちゃえば別にオワコン化などはしていません。
・・ただ、過去のラブコメブームと比較すれば若干落ち着いてしまってるのは否定できないけど。

昭和ラブコメブーム(少年誌系)

平成ラブコメブーム(ラノベ系)

で、上の流れのような興隆が今の令和にキテるのかというと、そこはやはり確かに疑問ですね。

近年、巷でよく囁かれてる話として、

いまどきの若者(Z世代やアルファ世代)は、人生のプライオリティとして<恋愛>が占める地位は決して高くない

というのがあります。
上図のように統計データとして出てるので、実際にそうなんでしょう。

・・だとすりゃ、令和に「ラブコメブーム」が訪れないのは必然なのでは?
とも考えられるが、でも先の春クールのアニメにおいて、ある1人の漫画家の原作の学園ラブコメが2本同時にリリースされた、という結構珍しい現象が起きていたことを皆さんはご存じですか?

「氷の城壁」原作:阿賀沢紅茶

「正反対な君と僕」原作:阿賀沢紅茶

漫画家:阿賀沢紅茶

性別:非公表(でも、おそらく女性)
年齢:非公表(でも、おそらくZ世代)

うむ、この阿賀沢先生は今最も旬のラブコメ作家といえるのかもしれん。
個人的には、この先生の作品は秀逸すぎて「ラブコメ」という枠に収まらん気もするが・・。
むしろ「心理劇」という表現の方が正しい気がするよ。

で、この阿賀沢先生はおそらく年齢が現在30歳前後、つまり「恋愛をしなくなった世代」の先駆者的立ち位置なんですよ。
そういう世代が描くラブコメ、というのを前提に上記2作品をご覧になってみてください。
正直、めっちゃ興味深いです。
と同時に、「なるほど!」と腑に落ちる点を作中のあちこちに見つけられるはず。

「氷の城壁」ヒロイン
「正反対な君と僕」ヒロイン

で、この先生の最大といえる特徴は、上の画の通り、ぶっちゃけヒロインがあまり可愛くないという点にあると思います(笑)。
・・いや、決して可愛く描ける画力がないわけじゃないんですよ。
事実、サブキャラでヒロインより可愛いのは出てくるし。
だから、これは一種の作家性の顕れと見るべきでしょう。

そこは、「いかにして可愛いヒロインを描くか」こそが絵師にとって最大のポイントだった平成ラブコメ(ラノベ系)の潮流からは完全に隔絶してると解釈してください。
いやホント、令和ラブコメってのは隔絶してますわ。
昭和の王道「三角関係」とは異なり、平成の王道「ハーレム」とも異なっている。
じゃ、阿賀沢先生が令和ラブコメにおいて描いてるのは何なのかといえば、それはね、「ヒトとの距離感」というやつなんですよ。

「氷の城壁」

・・え?何これ?ホラー?

と思うでしょうが、いえ、これは「氷の城壁」の中のワンシーンです。
いわゆる<心象表現>というやつですね。
このヒロインは無神経にラインを越えて土足で踏み込んでくる者には嫌悪感を抱くタイプであり、目には見えないにせよ、そこには「氷の城壁」があるんです。

「正反対な君と僕」

じゃ、「正反対な君と僕」におけるコレ↑↑は大丈夫なのか?
・・まぁ、こっちのヒロインはOKみたいですね。
でも結果オーライになったにせよ(一応カレシだし)、このオトコノコは「距離感」を正直よく分かってない状態でこれをやってるので、どちらかというなら限りなくアウトに近いセーフ、といったところでしょうか・・。
他のオンナノコにこれやったら即アウトでしょう。

くれぐれも繰り返しますが、他のオンナノコにこれをやったらおそらく即アウトでしょう・・

で、この「氷の城壁」と「正反対な君と僕」は同じ作者といえどテイストが少し異なっており、というのも後者の方は集英社「ジャンプ+」の連載作品なんですね。
で、先生ご自身「ジャンプに寄せた」と語っており、言うなれば純文学系の作家がちょっとラノベを書いてみました、的なニュアンスで捉えればいいと思う。
だから、これはアニメとしても可愛い作品で、めっちゃ見やすいです。

しかし、私としておススメしたいのは、どちらかというと「氷の城壁」の方ですね~。
こっちの方がデビュー作ということもあって、やっぱ阿賀沢先生の作家性が純度高く顕れてるように思うし・・。

で、こういう画↑↑などを見ると「氷の城壁」はコワい作風?と思ってしまうだろうが、いいえ、ちゃんとこれは学園青春ラブコメであり、オンナ2名、オトコ2名の合計4名のグループ内における個々の心の葛藤を描いた群像劇ですね。
一応ヒロインの主観が中心になるも、しかしその出来事を今度は別の人物の主観で描写し、お互いのその認識のズレが徐々に明かされていくような形態は、同クールのオンエアだった「淡島百景」にも少し近いかな・・。

しかしシリアス一辺倒では決してなく、結構な頻度でキャラはデフォルメ化され頭身が変わるのでご安心を(笑)。

あと、この阿賀沢先生は人間のキャラの作画はマトモなのに、なぜか動物の作画が明らかにおかしい・・(笑)。

「氷の城壁」に登場するイヌ
「正反対な君と僕」に登場するネコ

いやいや、これイヌもネコもデッサンとして明らかに間違っとるやろw

でも、展開がシリアスな時にもコイツらが出てきただけで、だいぶココロがふわっと楽になります。
いつもありがとうね。

左から雨宮、氷川、陽太、美姫

で、メインキャストの方は上の4名の仲良しグループです。

で、大事なのは、こいつらトモダチのグループであり、決してカレシ/カノジョの関係性じゃないということ!

ここが、まさしく前述した「距離感」というやつのキモであって、いかにもZ世代~アルファ世代らしい人間関係である。
彼らは、自分たちにとって一番快適な「距離感」はカレシ/カノジョではなくトモダチの関係性だと定義してるわけですね。
知人以上、恋人未満という関わり方が最も平穏であり、最も楽しい、と

いや、そこはZ世代やアルファ世代でなくとも、我らオジサン世代でも理解できますよ。
いわゆるハリネズミのジレンマというやつですよね。

距離が遠すぎるとお互いの体温の暖をとれない、でも近づきすぎるとお互いの針がお互いを傷つけてしまう・・。
だから「近すぎず遠すぎない」ベストディスタンスを見出す必要があるわけだが、氷川や雨宮らにとっては、それが今のトモダチ状態ということなんだと思う。
LOVEでなく、LIKEが実は一番いいんだよ、と。
だから変にLOVEに発展させて、今の一番心地よいLIKEの関係性というのをいつまでも壊したくないよね、と。
・・うんうん、分かる分かる。

だけど問題は、それでもいつの日にかLOVEの感情が芽生えてしまった時には、それを殺して今のLIKEなカンケイをその後もずっと続けていけますか?ということなんです。

まぁ、ぶっちゃけ言っちゃいますと、「氷の城壁」第1期ではそこに結論をまだ出しません。
第2期に持ち越しです(今年の10月~らしい)。
・・そうね、ここでモヤッとしたという人は、続けて「正反対な君と僕」を見てみるのもいいかもしれません。
なぜなら、こっちの方は打って変わり、恋人同士になってからの「距離感」というのがテーマになるから・・。

はい、「氷の城壁」や「正反対な君と僕」を見てると、前述の「いまどきの若者たちは恋愛に対し・・」という例の話、さほど悲観はしなくても大丈夫じゃないかな、という気がするんですよ。
確かに、彼らがそっち方面に積極的じゃないのは事実にせよ、でもそれって一部のジジイたちが言う「今の若い奴らは腑抜け」というのは違って、逆に彼らは旧世代よりクレバーだからこそ「距離感(ハリネズミのジレンマ)」を思考してるんじゃないかな、という気がしちゃうんですよね。
ご自身がZ世代の阿賀沢先生は、作品を通して「大丈夫私たちは私たちで何とかなります!」とポジティブに宣言してるようにも思えますけど?

ゆえに、表題の「いまどき<ラブコメ>はオワコン化しつつあるのか?」という件についても心配は無用で、きっとラブコメは今後もず~っと不滅ですよ。
カタチは色々変わるでしょうけどね。

ちなみに、私の中で史上NO.1ラブコメはいまだコレ↓↓ですけど。

「とらドラ!」(2008年)

いやぁ、もう20年近くも経つというのに、いまだこれを超えるのは出てきていない気が・・。

監督:長井龍雪
脚本:岡田麿里
キャラデザ:田中将賀

後に「超平和バスターズ」を名乗る御三方が出会ったのがこの作品であり、また釘宮理恵のツンデレが本作で遂にK点越えしましたよね。
あと、これはOP/EDも00年代における最高峰のひとつであり、堀江由衣がとにかく素晴らしい!

私、この作品はおそらく10周以上してると思うが、何度見ても飽きない。
自分でもこの飽きなさが少し不思議だったんだが、やっぱ改めて見るとこれね、まずアニメーションとしてめちゃくちゃクオリティ高いのよ。

たとえばの話、第1話だけでも見てほしいんだが、1カット1カット構図のとり方がいちいち完璧なんですよね。
ジブリ映画でもないのに、テレビアニメのラブコメでここまでの画面設計の完璧さを実現してた00年代って一体何だったんだろう?

第1話「虎と竜」

で、プロットにしても、たとえば「氷の城壁」に出てくるテーマ性はこの「とらドラ」の中で既に表現されてるんだよなぁ・・。
今もなお現役のラノベ作家たちにとってこの作品は、なかなか超えることのできない高い壁だと思う。
ちなみに、これの原作者・竹宮ゆゆこ先生は今はもうラノベ作家ではなく、一般小説家だという。
おいおい、勝ち逃げかよ・・と思うけど。

で、懸案の阿賀沢紅茶先生は、今後さらにもうひとつハネちゃうような気がしますね。
何よりジャンルは漫画でありつつ、その文学性はめっちゃ高いから。

「氷の城壁」「正反対な君と僕」
まだ未見の方は是非どうぞ!


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