なりたい自分を決めたら、やめることが増えた。
午前3時半。
目覚ましを止め、家族を起こさないように布団を抜ける。
コーヒーを入れ、まだ暗い部屋でパソコンを開く。家の中が動き始めるまでの二時間が、今のわたしにとって一番大切な時間だ。
少し前まで、空いた時間があればスマホを見ていた。
インスタを開き、誰かの投稿から気になる言葉を見つける。そのまま検索を始め、別の記事やニュースへ移っていく。
ほんの少しのつもりが、気づけば三十分。
役に立つ情報もある。楽しい時間でもある。
それでも、画面を閉じるたびに「今日も何も進まなかったな」という気持ちだけが残る。
やりたいことは、ずっと頭にあった。
本を書きたい。
仕事や人間関係で悩み、遠回りしてきた経験を、今困っている人へ届けたい。
けれど、それはいつも「時間ができたら」の話だった。
仕事が落ち着いたら。
子どもがもう少し大きくなったら。
書く力がついたら。
できない理由はいくらでも見つかるのに、その日はなかなか来ない。
仕事を終えて家に帰れば、夕食、風呂、子どもたちの明日の準備が待っている。「あとで書こう」と思っても、静かになる頃には眠気の方が強い。自分の時間を増やそうと夜を延ばせば、翌朝まで重くなる。
ある朝、ノートに「わたしは本を書く」と書いた。
願いではなく、これから起きることとして置いてみる。
その一行を見ていると、今までとは違う問いが浮かんだ。
本を書く人なら、今日をどう使うだろう。
答えは、意外なほど簡単だった。
朝、誰にも邪魔されない時間に書く。
そのために早く眠る。
夜のインスタをやめる。
目的もなくネットを歩き回らない。
知らなくても困らないニュースまで追いかけない。
最初に変えたのは、寝る前の過ごし方だった。いつものようにインスタを開きかけ、手を止める。「これは明日の朝と交換するものか」と考えると、閉じる理由ができた。
どれも悪いものではない。ただ、今のわたしが向かう先には持っていかないと決めた。
もちろん、毎朝きれいに起きられるわけではない。
眠くて机に座るまで時間がかかる日もあれば、スマホを手にしたまま夜更かしすることもある。
それでも、戻る場所はもう決まっている。
以前は、新しい自分になるために、何を始めるかばかり考えていた。
早起き、読書、勉強、執筆。
予定だけを増やし、できなかった日には自分を責める。
今は、先に余白をつくる。
すると朝の二時間が残り、昨日の続きへ手を伸ばせるようになった。
朝のうちに一段落でも書ければ、通勤する頃には、もう今日のやりたいことを一つ終えている。
それだけで、少し気持ちがいい。
明日の朝も、また続きを書く。
そのために今夜は、少し早く眠る。
