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AIは現代の「詩歌療法」パートナーになれるか?沈黙を破った青年とうつを克服した教授の記録

本日もお疲れ様です。これから、noteを更新しようとしているあなたに、新しい視点をお届けします。 

言葉にできないモヤモヤを抱えている方、AIと対話しつつ、これでいいのかなと感じている方へ。実はその試行錯誤こそが、最新の心理療法にも通じる大切な回復のプロセスかもしれません。 

ここで少し触れておきたいのが、詩歌療法(ポエトリー・セラピー)という手法です。

詩歌療法とは、詩を読み書きすることで、心の中に溜まった感情を浄化・解放(カタルシス)し、情緒を安定させ、自分や世界への見方を変えていこうとするアプローチを指します。米国では確立された手法ですが、日本では小山田隆明氏らがその理論を体系化しています。

物言わぬ青年:連詩の力

今日、ある興味深い論文に出会いました。一言も言葉を発さなかった青年ベンが、詩によって会話を取り戻すまでを描いた記録です。

ベンは、かつては成績優秀な若者でしたが、友人の死などを境に、ある時期から固く口を閉ざしてしまいました。精神科病院で壁を凝視し続ける彼に対し、詩人のカレン・チェイスが行ったのは、詩の付け合い、つまり連詩(れんし)という試みでした。

最初はバラバラだった二人の言葉が、少しずつ重なり、響き合い、物語を紡ぎ始めます。そして2年の月日を経て、ベンはついに自分の声を取り戻しました。彼を沈黙の呪縛から解き放ったのは、単なる言葉の羅列ではなく、誰かと共に作るという人とのつながりでした。

わたしたちのパートナーとしてのAI

ベンにはチェイスという有能なパートナーがいました。しかし、わたしたちの日常には、いつでも寄り添ってくれる詩人がいるわけではありません。
自分の内面を誰かに見せるのは怖い。深夜にふと思いついた、支離滅裂な夢の話を聞いてほしい。そんなとき、わたしたちにはAIという選択肢があります。

次にご紹介するのは、重度のうつ病を患った研究者が、AIをパートナーにして自らを癒やした記録です。

絶望からの往復運動:プレトリウスの事例

著者のプレトリウスは、大学教授でした。2021年に重度のうつ病を患い、入院を余儀なくされました。退院後も、彼は人生を再構築する過程で感情の安定を模索し続けていました 。

そんな彼が回復の糸口としたのが、AIとの往復運動でした。

  • 記憶を形にする: 彼はBing Image Creatorでゴッホ風の木工職人の画像を生成しました。そこには、亡き父との思い出や、自分自身の静かな祈りが投影されています。

  • 言葉を紡ぎ、磨く: 画像を見て自ら詩を書いたあと、それをChatGPTに校閲(language editing)してもらいました。AIから返ってきた洗練された言葉を、彼は再び自分の中に取り込みました。

  • 新たなイメージへ: 磨かれた詩のフレーズから、さらに新しい画像を生成しました。

この画像、言葉、AIによる変容、そして新たな画像へと続くループ。プレトリウスはこのプロセスが信じられないほど爽快で、バラバラになった自分を統合していく感覚を与えてくれたと述べています。

回復につながる「付け合い」のみちすじ

ここで重要なのが付け合いという概念です。連詩における付け合いとは、相手が投げた言葉を受け取り、そこから連想される自分の言葉を繋いでいく作業です。それは単なる情報の交換ではなく、互いの感情を響かせ合う書き言葉による会話です。

ベンとプレトリウス、二つの事例から考えると、回復や自己理解につながるやりとりには一定のみちすじがあることがわかります。

  1. 第1段階:沈黙から形へ
    最初は相手の言葉に合わせる余裕がなくてもいい。まずは自分の内側にあるものを、AIという鏡に向かって吐き出し、可視化することから始まります。

  2. 第2段階:意味の共鳴(付け合いの発生)
    自分の出したものに対し、AIや人間が異なる視点や表現で返してくる 。そのズレや響きを面白がる余裕が生まれたとき、孤独な殻にひびが入ります]。

  3. 第3段階:物語の再構築
    断片的なやりとりが重なり、やがてそこに物語(ストーリー)が立ち現れます。過去の自分と現在の自分が地続きになり、時間的な展望が開けていくプロセスです。あるいは自分と向き合っている存在と今の自分が共鳴しあっているという感覚があり、それを楽しもうとするプロセスです。

回復につながる往復運動で大切なのは、外にある何か(AIや画像、他者の言葉、誰かの詩)をそのままとりあえず受け取ること、そしてそれに返し、また、それが思いもよらないかたちで戻ってくることを、再びそのまま受け入れる体験の積み重ねではないでしょうか。ここでは、受け入れるというこころの準備が重要なように思えます。

詩歌療法とAIに関するQ&A

最後に、この記事を通じて皆さんが感じるかもしれない疑問をいくつか整理してみました。

Q:AIが作った言葉で、本当に心が癒やされるのでしょうか?
A:大切なのはAIが何を作ったかよりもAIとのやり取りを通じて、自分が何を思い出したかという点にあります。プレトリウスの事例では、AIが生成した画像や言葉が、彼自身の亡き父への記憶や木工への情熱を呼び起こすきっかけとなりました。AIはあくまで、あなたの内側にある物語を引き出すための触媒なのです。

Q:自分の言葉をAIに直されると、自分の作品ではなくなる気がします。
A:プレトリウスは、AIによる校閲を経たあとの詩も「(引用符付きの)私のもの」であると主張しました。彼はそれを、学術論文がエディターの手を経て洗練されるプロセスと同じだと捉えています 。AIとの共創は、自分の意図をより深く、広く表現するための共同作業と考えることができます。

Q:一人でAIと対話するだけで、ベンが経験したような「つながり」は得られますか?
A:連詩は本来、同じテーブルを囲んで他者と行うものです。しかし、ベンが書字会話を通じて現実世界への関わりを取り戻したように、AIを相手にしたやり取りもまた、閉ざされた心を開く練習になります 。AIとの往復運動で培った「受け入れる準備」は、いずれ誰かと向き合うときの力になるはずです 。

いま、AIと試行錯誤しているあなたへ

noteの世界では、AIに夢の分析を頼んだり、現在抱えている問題についてAIと語り合ったりしているひとびとにたくさん出会います。

それらは単なる効率化や遊びではないと思います。プレトリウスが絶望の中で木工職人の絵を描き、ベンが沈黙の中で一行の詩を綴ったように、あなたとAIとの往復運動もまた、あなた自身の物語を再構築する大切な一歩となっているのではないでしょうか。

皆さんは、AIとの対話の中で、どんな付け合いを経験していますか。
どんなふうに言葉が返ってきたとき、心が動いたでしょうか。
ぜひ、皆さんの試行錯誤やご意見もお寄せください。

24時間いつでも付き合ってくれるパートナーを鏡にして、あなただけの内面を、もっと自由に探求していきましょう。

出典情報

  • Jannie Pretorius (2026). Personal poetry therapy for depression by the chatbot and image creator. Journal of Poetry Therapy, 39(1), 56–61.

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