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【ショートショート】第二十一話『返却』

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2026年8月14日(金)。

二枚の写真を、
鞄の中に入れた。

会社へ向かう。
いつもの道。
いつもの朝。

なのに。

どうしても、
気になる。

二枚目の写真。

『B3F』

あの場所だ。
間違いない。

でも。
その場所で何があったのか。

思い出そうとすると、
なぜか、ぼんやりする。

床。
古びた照明。
エレベーター。

そこまでは、
思い出せる。

その先が、
出てこない。

会社に着いた。

仕事を始める。

午前中は、
写真のことを忘れていた。

……つもりだった。

昼休み。

鞄を開ける。
二枚の写真が目に入った。

一枚目。
コンビニの白い壁。

二枚目。
B3F。

写真を見つめる。

すると。
さっきまで曖昧だった場所が、
少しだけ鮮明になった。

古びた照明。
薄暗い床。
エレベーターの扉。

そして──
誰かが、
そこにいる。

……誰だ?

写真から目を離す。
消えた。

もう一度見る。

また、
浮かんでくる。

僕は、
写真を机の引き出しに入れた。

午後。

仕事をしていると、
ふと気づいた。

おかしい。

写真を見ていると、
思い出せる。

見なければ、
思い出せない。

まるで。

写真の中に、
何かが残っている。

いや。
違う。

写真の中にあるのは、
風景だけじゃない。

僕の記憶だ‼️

そう思った瞬間。

背中が、
少し寒くなった。

帰宅してから、
今朝のレシートを取り出した。

《入手済み》
・証明写真 2枚

その下に──
今朝はなかった文字が、
小さく印字されていた。

《返却期限》
8月14日 19:00

僕は、
しばらく動けなかった。

返却?
何を?
写真を?

でも。
これは買ったものじゃない。
お金を入れていない。

それでも、
僕の手元にある。

……なら。

返すのは、
写真じゃないのかもしれない。

時計を見る。

18:47。

あと、
十三分。

僕は、
二枚目の写真を取り出した。

B3F。

薄暗いロビー。
エレベーター。

写真を見つめる。

少しずつ、
記憶が戻ってくる。

7月11日。
土曜日。
1時59分。

電話。

そして──

あの言葉。

「今回は、・・・。」

僕は、
写真から目を離した。

また、
曖昧になった。

……やっぱり。

写真の中に、
記憶がある。

なら。

返さなければならない。

僕は、
二枚目の写真を持った。

そして──

ゆっくり、
二つに折った。

紙が、
小さく鳴った。

もう一度。

今度は、
破った。

ビリッ。

その瞬間。

戻ってきた。

7月11日。
土曜日。
1時59分。

B3F。

薄暗いロビー。
エレベーター。
古びた照明。

そして。

僕は、
そこに立っていた。

いや。

立っていたのは、
僕だけじゃない。

電話が鳴る。

一度目。
出ない。

二度目。
受話器を取る。

そして、
僕は言った。

今回は、間に合った。

時計を見る。
19:00。

レシートを確認する。

《入手済み》
・証明写真 1枚

その下にあった、

《返却期限》

の文字が、消えていた。

僕は、
破れた写真を見つめた。

もう、
B3Fは、
はっきりと覚えていた。

……ただ。

一枚だけ、
手元に残っている。

コンビニの白い壁。

その前に立つ、
僕。

何の変哲もない、
証明写真。

なのに。

その写真を見ていると、
なぜか、

84日と7が浮かんだ。

公園。
花屋。
赤い薔薇。

そして、
写真の中にいる、
もう一人の僕。

僕は、
写真を握った。

……この景色を、
あのロビーから見ていたのか?

《A Drop Remains.💧

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