従業員満足度を上げれば、会社は良くなるのか
「従業員満足度を上げよう」
会社では、よく使われる言葉だと思う。
給与を上げる。
休みを増やす。
福利厚生を充実させる。
柔軟に働けるようにする。
どれも大切な施策になり得る。
ただ、私は一つ分けて考えたい。
満足していることと、仕事に主体的に関わっていることは同じなのだろうか。
「満足」の中身は、人によって違う

例えば、同じ会社に4人いる。
Aさんは、裁量が大きい方が働きやすい。
Bさんは、指示が明確な方が安心する。
Cさんは、成長できる仕事に満足を感じる。
Dさんは、仕事と私生活をきっちり分けたい。
全員の希望は少しずつ違う。
だから、
「社員が満足する会社をつくろう」
と言っても、何に満足してもらうのかが曖昧なままだと難しい。
一人には良い制度が、別の人には負担になることもある。
例えば裁量を増やす。
経営者は、
「自由に働けるようになった」
と思う。
でも、ある社員は、
「判断する責任が増えた」
と感じるかもしれない。
同じ施策でも、受け取り方は違う。
採用後に全部合わせるのは難しい

だから私は、
満足度を高める施策の前に、
会社と人の価値観をどこまで合わせているか
を考えた方がいいと思っている。
この会社は何を大切にするのか。
どんな働き方を求めるのか。
どんな人を評価するのか。
どこまで主体性を求めるのか。
それを採用時に伝える。
応募する側も、
「自分はこの会社で働きやすそうか」
を考える。
もちろん、完全に一致する人などいない。
でも、最初から大きく違っている価値観を、入社後の制度だけで埋めようとすると苦しくなる。
満足度施策より先に、会社と人の価値観のすり合わせがある。
そんな順番も必要なのではないだろうか。
「何が欲しいですか」と聞けば、働きやすさに寄る
社員の声を聞くことは重要だと思う。
ただ、
「もっと良い会社にするために、何が欲しいですか」
とだけ聞けば、
給与を上げてほしい。
休みを増やしてほしい。
仕事を減らしてほしい。
柔軟に働きたい。
そうした声が出るのは自然である。
私でも、聞かれ方によってはそう答えると思う。
ただ、会社にはもう一つ目的がある。
顧客へ価値を届ける。
利益を出す。
会社を続ける。
だから社員の要望を聞くことと、そのすべてを制度にすることは同じではない。
経営側には、
「その施策は、働く人と会社の双方にとって持続可能か」
を考える役割がある。
働きやすさと働きがいは、少し違う

例えば、
休みが取りやすい。
給与が適正である。
柔軟に働ける。
負担が過剰ではない。
これは「働きやすさ」に関係する。
一方で、
自分の仕事が役に立っている。
成長している。
自分で考えて動ける。
仲間と成果を出せる。
仕事をやり切った感覚がある。
こうしたものは「働きがい」に近い。
もちろん、きれいに分けられるものではない。
両方必要だと思う。
ただ、
働きやすさを増やすだけで、仕事へのエンゲージメントまで高まるとは限らない。
休みが増えた。
だから会社への主体性も高まる。
給与が上がった。
だから挑戦するようになる。
必ずしも、そうはならない。
ここを同じものとして扱うと、
「これだけ制度を良くしたのに、なぜ社員は変わらないのか」
という経営側の不満にもつながる。
何に満足してほしい会社なのか

従業員満足度を高める。
その考え方自体に問題があるわけではない。
ただ、その言葉の前に、
「自分たちの会社は、何に満足してもらいたいのか」
を考えてみてもいいと思う。
楽に働けることなのか。
安心して長く働けることなのか。
成長できることなのか。
難しい仕事に挑戦できることなのか。
仲間と成果を出せることなのか。
会社によって答えは違う。
そして、その答えに合う人も違う。
私自身も、
「社員が満足する会社をつくりたい」
と言いながら、
誰の、どんな満足を想像していたのだろうか。
従業員満足度を上げる前に。
何に満足してほしい会社なのか。
そこから一度考えてみてもいいのではないだろうか。
問いの足跡への思い
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