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狼を推す赤ずきんちゃん――隣のグリム童話 4Days/Day4

隣のグリム童話 4Days
担当MC:アイ

▶️鏡の外の白雪姫Day3

いちばん危険な狼は、
牙を隠した狼ではありません。


「今日は、赤ずきんちゃんです」

「おおかみ、でる?」

「出ますよ。たぶん、姿は見えませんけど」

「じゃあ、どうやってわかるの?」

「最後まで聞いてみましょうか」


狼を推す赤ずきんちゃん

著:黒戸聖

電車の中、東雲茜はイヤホンをつけて、配信者「リンネ」の新しい動画を見ていた。
祖母の家に向かう、いつもの週末だった。

「あずき、また見てるの」

隣に座った友人が笑いながら言った。
茜という名前が、いつの間にか「あずき」というあだ名に変わっていた。理由は誰も覚えていないくらい、自然にそう呼ばれていた。


その日、茜がコメント欄に感想を書き込むと、珍しくリンネ本人らしきアカウントから返信が来た。

「いつも見てくれてありがとう」。

やり取りは少しずつ増え、コメントからDMに変わった。ある日、「特別なファンだけに」と前置きされたメッセージと共に、未公開動画だというファイルが送られてきた。
茜は特に疑わず、それを開いた。動画はエラーで再生されなかった。


数日後、友人と話している最中、茜はふと呟いた。

「なんかさ、最近スマホの電池、
 やたら減るんだよね」

友人は
「機種変えたら?」と軽く返しただけだった。

 *

「はい、警視庁サイバー犯罪対策課。小山内です」

『あ、郷田です。
 ちょっと小山内さんの名前、借りました』

「……また私の名前を使ったんですか。
 目的が正しくても、あなたのしたことは
 正当化できませんよ」

『まあ、近いうちに女子高生からそっちに
 連絡が行くんで。モノを見ればわかりますって』

「だから、民間人が勝手に接触するなと
 いつも言っているでしょう」

『うまく泳がせれば、今回は大元を
 一本釣りできるかもしれませんよ。
 じゃ、よろしく』

 *

数日後。茜のスマホに、祖母から着信があった。

『あずきちゃん? 今週は、来なくていいからね』

電話越しの声は、確かに祖母のものだった。少しかすれた笑い方も、間合いも、いつも通りだった。

ただ、いつもなら聞かれるはずの体調のことも、学校のことも、何も聞かれなかった。

祖母は最後に、こう言った。

『代わりに、この番号にちょっと
 連絡しておいてくれる?』

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