狼を推す赤ずきんちゃん――隣のグリム童話 4Days/Day4
隣のグリム童話 4Days
担当MC:アイ
いちばん危険な狼は、
牙を隠した狼ではありません。
「今日は、赤ずきんちゃんです」
「おおかみ、でる?」
「出ますよ。たぶん、姿は見えませんけど」
「じゃあ、どうやってわかるの?」
「最後まで聞いてみましょうか」
狼を推す赤ずきんちゃん
著:黒戸聖
電車の中、東雲茜はイヤホンをつけて、配信者「リンネ」の新しい動画を見ていた。
祖母の家に向かう、いつもの週末だった。
「あずき、また見てるの」
隣に座った友人が笑いながら言った。
茜という名前が、いつの間にか「あずき」というあだ名に変わっていた。理由は誰も覚えていないくらい、自然にそう呼ばれていた。
その日、茜がコメント欄に感想を書き込むと、珍しくリンネ本人らしきアカウントから返信が来た。
「いつも見てくれてありがとう」。
やり取りは少しずつ増え、コメントからDMに変わった。ある日、「特別なファンだけに」と前置きされたメッセージと共に、未公開動画だというファイルが送られてきた。
茜は特に疑わず、それを開いた。動画はエラーで再生されなかった。
数日後、友人と話している最中、茜はふと呟いた。
「なんかさ、最近スマホの電池、
やたら減るんだよね」
友人は
「機種変えたら?」と軽く返しただけだった。
*
「はい、警視庁サイバー犯罪対策課。小山内です」
『あ、郷田です。
ちょっと小山内さんの名前、借りました』
「……また私の名前を使ったんですか。
目的が正しくても、あなたのしたことは
正当化できませんよ」
『まあ、近いうちに女子高生からそっちに
連絡が行くんで。モノを見ればわかりますって』
「だから、民間人が勝手に接触するなと
いつも言っているでしょう」
『うまく泳がせれば、今回は大元を
一本釣りできるかもしれませんよ。
じゃ、よろしく』
*
数日後。茜のスマホに、祖母から着信があった。
『あずきちゃん? 今週は、来なくていいからね』
電話越しの声は、確かに祖母のものだった。少しかすれた笑い方も、間合いも、いつも通りだった。
ただ、いつもなら聞かれるはずの体調のことも、学校のことも、何も聞かれなかった。
祖母は最後に、こう言った。
『代わりに、この番号にちょっと
連絡しておいてくれる?』
ここから先は
この記事が参加している募集
少しでも”考えるきっかけ”になる記事を投稿していきます。気に入って頂けましたら応援よろしくお願いします。
