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若者の「電話離れ」から考える。人を動かすのは、熱意の押し売りではなく「心理的安全」の確保である。

皆さまのセールスコンサルタント、ごりごりのおちびさんです。
いつもお読みいただきありがとうございます。

9月に入り、朝夕の空気にふと秋の気配を感じるようになりました。
ビジネスの現場も、夏の少し浮ついた空気感から抜け出し、本来の落ち着きを取り戻しつつありますね。

さて、前回の記事では「海離れ」をテーマに、人が行動を起こす際に無意識に避けている「認知的摩擦」についてお話ししました。

今回は、それに続くもう一つの大きな社会現象について考察してみたいと思います。

それは、若者の「電話離れ」です。

「最近の若い人は、固定電話が鳴ると怯えるらしい」
「複雑な業務連絡すら、電話ではなく全てチャットで済ませたがる社員がいる」
「美容室や飲食店の予約すら、絶対に電話を使わずネットで完結させたがる」

こうしたニュースを見て、「最近の若者はコミュニケーション能力が落ちている」と揶揄する風潮がありますが、それは大きな間違いです。

日々、高額な商談の中で心理戦の最前線に立つ私の目には、全く違う景色が見えています。

若者たちは決して弱いわけでも、コミュ力が低いわけでもありません。
彼らが電話を徹底的に避けるのには、極めて論理的で正当な「理由」があります。

電話離れの本当の理由は「タイパ」ではない


「なぜ彼らは電話に出ないのか?」

この問いに対して、少し前まで私は「自分の時間を強制的に奪われることを嫌がっているからだろう」と推測していました。

現代は無限のコンテンツ時代であり、自分のペースを乱される同期コミュニケーションを嫌うのは当然だと。

しかし、クライアントの担当者や、社内で「Z世代」と呼ばれる若手社員たちと日々コミュニケーションを重ねる中で、もっと根深い、全く別の理由があることに気がついたのです。

彼らが電話着信に対して抱いているのは、時間を奪われる不満ではなく、「予測不能な事態に対する強烈な恐怖」でした。

「誰から、どんな要件でかかってきたか分からない」
「その場で調べて論理的に返すことができず、即答を求められる」
「言葉に詰まったり、間違ったことを言ってしまうプレッシャーがある」

つまり、テキストのような「非同期コミュニケーション」であれば守られていたはずの「自分の状況に対するコントロール権」や「心理的な安全領域」が、電話というツールによって強制的に侵犯されてしまうこと。

これこそが、彼らが着信音に怯える本当の理由だったのです。

この現象は日本に留まらず、欧米でも「Telephobia(電話恐怖症)」と呼ばれ、若年層の約7割がアポなしの着信に強いストレスを感じるという世界的潮流になっているそうです。

人は「逃げ道」を塞がれると、嘘をつく


ではなぜ、現代人はここまで「予測不能な事態」を恐れ、コントロール権を手放すことを嫌うのでしょうか。

それは、電話というツールが、人間関係における「逃げ道」を強制的に奪うからです。

テキストコミュニケーションには「間」があります。

相手からの要求に対して、どうすれば角が立たないか、どう断ればいいか。
思考を整理し、他者とのダイレクトな衝突を避けるための「時間」が用意されています。

しかし、電話という生のコミュニケーションにはそれらがありません。
要件も分からないまま土俵に引きずり出され、相手の熱意に対してその場で「即決」を迫られる。

人間は逃げ道を塞がれると、その場の衝突を避けるために「とりあえず肯定」してしまう生き物です。

「電話では前向きだったのに、後日メールで断られた」

日々現場に立つ私も、幾度となく味わってきた苦い経験です。
これこそが、無理やり退路を断たれた顧客が、安全圏に逃げ込んでから発動させる「本音」なのです。

他者との衝突を避けたい人間にとって、安全圏外での決断の強要は、極めてストレスのかかる苦痛に他なりません。

相手の逃げ道を塞ぎ、丸腰の状態でプレッシャーをかける恐怖。
これをビジネスでの文脈に置き換えた時、全く同じ過ちを犯している人があまりにも多いことにハッとさせられます。

良かれと思った「熱意」が不意打ちになる瞬間


日々ビジネスの最前線にいると、非常にもったいない「すれ違い」を目の当たりにします。

素晴らしい作品を生み出すクリエイターや、真摯に顧客と向き合う経営者。仕事柄、そうした熱意ある方々とご一緒する機会が多いのですが、彼らほど無自覚にこの「罠」に陥りがちです。

「直接話した方が早い」「自分の熱意を直接伝えたい」という純粋な思い。

それ自体は尊いものですが、まだ関係値が構築されていない初期段階において、それは顧客の「心理的な安全領域」を無自覚に侵すリスクを孕んでいます。

残酷な事実ですが、受け手の準備が整っていない状態での一方的な「熱意」は、合理性を重んじる顧客の目には単なる「プレッシャー」として映ってしまうのです。

相手を警戒させず、整理された資料やテキストを用意し、相手が好きな時間に確認して判断できる「非同期」の状態でボールを投げる。

まずは徹底的に相手のコントロール権を尊重し、ハードルを下げること。
これが、選ばれ続ける人が当たり前に行っている気遣いです。

電話は「決断」のためではなく「不安の解消」のために使う


実は今回、このテーマで筆をとったのは、他でもない自分自身への戒めでもあります。

私は商談において、声のトーン、沈黙の間、即座の切り返しなど、電話というツールを最大の武器としています。

空気を支配し、こちらのペースに巻き込むのは私の得意領域です。

だからこそ、油断するとつい「テキストで打つより、サクッと電話してしまった方が早い」という傲慢さが出てしまう。

自分が得意な土俵に引きずり込み、無自覚に相手の心理的な安全領域を脅かし、「決断を迫る」という感覚が麻痺するのです。

電話は、決して使ってはいけない悪手ではありません。
ただし、その役割は「相手に決断を迫ること」ではなく、「相手の不安に寄り添い、消し去ること」です。

検討と決断 = テキスト(心理的な安全領域の確保)
不安の解消と感情のケア = 電話(温度感の同調)

私は、この役割と順番を絶対に間違えないようにしています。

相手に十分にテキストでの検討時間を用意し、安全を確保するという「敬意」を示した後にだけ、電話という武器は最大の威力を発揮するのです。

「なかなか案件が決まらない」「人間関係が円滑に進まない」と悩む方へ。

あなたが良かれと思ってかけているその電話は、相手の心理的な安全領域を脅かす「不意打ち」になっていませんか?

明日送るそのメッセージ、本当に「今すぐ電話」する必要がありますか?
コミュニケーションの手段を少しだけ見直してみてはいかがでしょうか。

ごりごりのおちびさん


【追伸】 今回の記事で解説した「教養としての営業」について、より実践的なノウハウを知りたい方へ。

「顧客の心理的な安全領域を守りながら、どう提案すればいいのかわからない」 「テキストや会話の中で、相手にストレスを与えずに主導権を握りたい」

そんな悩みを抱えるクリエイターや個人事業主の方に向けて、私が営業現場で実際に使っているテクニックをnoteにまとめました。

実は、商談で言われる「高い」「少し検討します」という断り文句の正体も、多くの場合、顧客が抱える『見えない摩擦(面倒くささ・心理的不安)』への警戒です。

その不安を先回りして消し去り、相手にストレスを与えずにクロージングへ導く。

よろしければご覧いただき、皆さまのビジネスのお役に立てていただければ幸いです。

▶︎ 【悪用厳禁】「高い」「検討します」を論理で崩す。富裕層が魔法にかかったように首を縦に振る『魔法のキラーフレーズ』虎の巻【厳選10選】

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