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【士業事務所の組織作り】スタッフの不満は組織の病気ではなく、改善のヒント

▮不満があることは自然なこと

司法書士、行政書士、社労士、土地家屋調査士、税理士事務所。スタッフが数名しかいない小規模な事務所であっても、人が集まれば組織です。

そして組織である以上、経営者とスタッフの間に意見の違いや不満が生まれることは避けられません。なぜなら、組織とは異なる価値観や経験を持つ人たちが一緒に働く場所だからです。

特に士業事務所では、経営者とスタッフの距離が近い分だけ、お互いの考え方や仕事の進め方が見えやすく、摩擦も生まれやすくなります。

摩擦の例としては、スタッフからは、

  • 先生の指示が曖昧でわかりにくい

  • もっと効率的なやり方があると思う

  • 現場の状況を理解していない

  • このやり方では人が育たない

という声が出ることがあります。

一方で経営者にも、

  • 給与や賞与はきちんと支払っている

  • 働きやすい環境を作ろうとしている

  • スタッフに負担をかけないよう自分が残業している

  • スタッフの将来を考えて指導している

という思いがあります。

だからこそ、自分の知らないところで批判されていると知れば、経営者としては複雑な気持ちになるでしょう。

しかし私は長年、士業事務所の経営支援に携わる中で、経営者とスタッフ双方の話に耳を傾けてきて強く感じるのは、不満があることではなく、不満をどう扱うかが事務所の成長を決めるということです。

私はむしろ、スタッフが何も不満を言わない事務所の方が心配です。問題がないから黙っているのか、それとも「言っても無駄だ」と思われているのかは外から見ただけではわからないからです。

▮不満を言う人と改善する人

例えば、「新人教育がなっていない」という不満があったとします。そのとき、「うちの事務所は教育がダメだよね」と言うだけのスタッフがいます。

一方で、「新人が毎回同じところでつまずいているので、簡単でもマニュアルを作りませんか?」「たたき台なら私が作ります」と行動できるスタッフもいます。

問題意識は同じです。
しかし、事務所にもたらす価値はまったく違います。

業務改善でも同じです。「非効率だ」と言うだけの人。「ここをこう変えれば時間を短縮できると思います」「まず私が試してみます」と動ける人。

もちろん組織を前に進めるのは、後者のスタッフです。

問題を発見する能力と、問題を改善する能力は別物です。士業事務所には問題を見つけることが得意な人はたくさんいます。しかし、改善策を考え、実行までできる人は決して多くありません。

だから経営者が見るべきなのは、不満を持っているかどうかではなく、不満を持ったときにどう行動する人材なのかです。

▮「評論家」ではなく「当事者」

組織には必ずといってよいほど評論家が生まれます。評論家でいることは簡単で、責任もなく、失敗することもありません。一方的に批判していればよいのですから楽です。

  • うちの事務所はダメだ

  • 先生は現場をわかっていない

  • 人が育たない

  • もっとこうすればいいのに

言っていることが間違っているとは限りません。むしろ正しい場合もあります。しかし、

・問題を見つける。
・批判する。
・誰かの責任にする。

そこで終わってしまうのでは何も変わりません。もっと言うと、何も変わらないのではなく、面従腹背で、陰口ばかりの陰湿な事務所になります。

言うまでもなく、組織を変えるのは評論家ではなく、当事者です。

当事者とは、「誰が悪いのか」を考える人ではなく、「自分に何ができるのか」を考える人です。そして、「まず自分がやってみます」と言える人です。

評論家は正しさを求め、当事者は改善を求めます。そして、評論家は組織の外側に立っていて、当事者は組織の中に立っています。

もちろん全ての問題をスタッフが解決する必要はありません。経営判断が必要なこともあります。

それでも、事務所を良くする役割を経営者だけが背負うのではなく、スタッフも担える状態を作ることは非常に重要です。

▮経営者がやってはいけないこと

スタッフの不満を耳にしたとき、経営者が最もやってはいけないのは犯人探しです。

「誰が言っているんだ」
「誰から聞いたんだ」

と追及しても問題は解決しません。

スタッフは、「余計なことを言うと面倒なことになる」と感じるようになり、本音が出なくなります。

しかし、本音が出なくなったからといって、問題が消えたわけではありません。問題が経営者の耳に届かなくなっただけです。

私が見てきた事務所でも、そうした状態が続くと、

  • 同じ問題が何年も放置される

  • 属人化が進む

  • 離職が増える

  • クレームが増える

といった傾向が見られることは少なくありません。

耳の痛い話を遠ざけることは、組織の健康状態を見えなくすることでもあるのです。

▮「何かあったら言って」だけでは不十分

経営者の中には、「何か問題があったら言ってほしい」と言う方もいます。それ自体は素晴らしいことです。ただ、それだけでは足りません。

例えば、「新人教育に問題があると思います」と言われたら、「具体的にはどこですか」と聞く。さらに「どうすれば改善できると思いますか」と聞く。そして最後に、「そのために、あなたは何ができますか」と聞いてみる。

この質問によって、単なる不満なのか。改善したいという思いなのか。当事者意識があるのかが見えてきます。

▮当事者意識は仕組みで育つ

ここで重要なのは、当事者意識は精神論ではないということです。人は「もっと主体的に考えろ」と言われたから主体的になるわけではありません。

  • 提案しても否定される。

  • 改善案を出しても無視される。

  • 行動すると余計な仕事が増える。

そんな環境では誰も本音も語らなければ、行動もしなくなります。

逆に、

  • 提案を聞いてもらえる

  • 小さな改善でも試せる

  • 行動した人が評価される

  • 失敗しても責められない

そんな環境であれば、人は少しずつ当事者になっていきます。当事者意識は個人の性格だけで決まるものではありません。組織の仕組みや文化によって育まれるものでもあるのです。

▮人が育たないのではなく、育つ仕組みがない

士業事務所の経営者からよく聞く悩みとして、

「スタッフが育たない」
「自分がいないと回らない」
「仕事を任せられない」

という相談を受けることがあります。

しかし、それはスタッフの能力が低いために起こる問題とは限りません。

・何を任せるのか。
・どこまで任せるのか。
・どう教えるのか。
・どうフィードバックするのか。
・意見が言いやすい環境なのか。
・スタッフが考えて動ける仕組みがあるのか。

そうした組織の設計そのものを見直す必要がある場合も少なくありません。

良い組織とは、不満がない組織ではありません。問題が見つかったときに、「誰が悪いのか」ではなく、「どうすれば良くなるのか」を考えられる組織です。

そして、経営者もスタッフも、「この事務所を良くするために自分は何ができるのか」を考えられる組織です。

▮では、何から始めればよいのか

もしスタッフの不満が気になっているのであれば、まず次の3つから始めてみてください。

① スタッフの不満を書き出してみる
② 不満の中から改善できそうなものを1つ選ぶ
③ 改善策と担当者を決めて実行する

重要なのは、完璧な解決策を考えることではありません。小さくても改善を積み重ねることです。

不満が出るということは、まだ事務所を良くしたいと思っている人がいるということでもあります。

その声を愚痴で終わらせるのか、改善につなげるのか。そこが組織作りの分かれ道です。

私は士業事務所の経営者とスタッフ双方の視点から、経営者が一人で抱え込まなくても回る組織作りを支援しています。

もしこの記事を読んで、

「スタッフは当事者として関われているだろうか」と感じられたのであれば、一度事務所の状況を整理してみる価値があるかもしれません。

必要であればご相談ください。一緒に事務所の現状を整理しながら、どこに課題があり、何から手を付けるべきかを考えていきます。

お問い合わせ
hirahara.conatus@gmail.com

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