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母との関係は、わたしの原点③


①で、母とのことを、
「今なら書いてもいいのかもしれない」と
思って書いた。

②では、子どもの頃から続いていた
「母を守らなくてはいけない」という感覚と、
結婚後の二世帯住宅での6年半について書いた。

母との関係は、わたしの原点①はこちら
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母との関係は、わたしの原点②はこちら
         ↓


今回は、その先のことを書いてみようと思う。

二世帯住宅を出たあとも、
わたしの中にあったもの。

それは、

「母を守らなくてはいけない」

という気持ちだった。



二世帯住宅を出ると決めたとき、
母と完全に遠く離れて暮らすつもりはなかった。

子どもたちの環境も、なるべく変えたくなかった。

それまで通っていた学校や習い事、
友達との関係もできるだけ変えないようにと、
引っ越し先は、
母の家から車で15分ほどのところにした。

そして、母には
「週末は子どもたちと一緒に、
必ず様子を見に来るから」
と伝えた。

母を一人にしてしまうことへの不安もあった。

何かあったらどうしよう。

高齢の母に寂しい思いをさせてしまう。

そんな気持ちもあった。

だから、電話やLINEも、
ほぼ毎日のようにしていたと思う。

離れて暮らすようになっても、

「母は大丈夫かな」

と、どこかでいつも気にしていた。

母の安否を確認しなくちゃ。

ちゃんと様子を見なくちゃ。

寂しい思いをさせないようにしなくちゃ。

そんな気持ちが、いつも心のどこかにあった。

母を一人にした罪悪感もあった。

母との物理的な距離はできても、
心の距離は、そう簡単には変わらなかった。



母と離れて暮らすようになってからも、
わたしの心は何度も揺れた。

少し楽になったと思う日もあれば、

母のことが気になって仕方がない日もある。

会えば、心がざわつく。

母の言葉が気になって、
家に帰ってからも何度も思い返してしまう。

「どうしてなんだろう」

どうして母といると、
こんなに疲れるんだろう。

どうして母の言葉に、
こんなにも心を持っていかれるんだろう。

どうして、母の不安が、
いつの間にかわたしの不安になっているんだろう。

離れてもなお、

母との苦しい関係は、
わたしの中に続いていた。



母を理解したかった

母には、母の苦しさがあったのだと思う。

それを知って、理解できれば、
少しは母との関係も楽になるんじゃないか。

そんな思いから、
わたしは心理学やカウンセリングに興味を持った。

自分自身のことも知りたかった。

そして何より、

母との関係が、なぜこんなに苦しいのか。

それを知りたかった。

母の中では、何が起きているんだろう。

どうして、母は
あんなふうに感情が大きく揺れるんだろう。

その理由を知りたかった。



心理学やカウンセリングを学び始めて
しばらく経った頃、
わたしは「境界性パーソナリティ障害」というものを知った。

感情を調整することの難しさ。

見捨てられることへの強い不安。

自己イメージや対人関係の不安定さ。

感情の大きな揺れ。

それまで母との間で起きていたことを、
少し違う角度から見られるようになった。

母が医療機関で診断を受けたわけではないので、
母の言動のすべてを境界性パーソナリティ障害で説明することはできない。

ただ、

「母自身も、自分の感情をどう扱ったらいいのか分からなかったのかもしれない」

そう考える視点を持てたことは、
わたしにとって大きかった。

長い間、

「どうして?」

としか思えなかったことを、
別の角度から見ることができるようになった。

それだけでも、
心の中に、少しだけ余白が生まれたような
気がした。



でも、

母を理解しようと学んだからといって、
すぐに苦しさがなくなったわけではなかった。

分かったと思っても、
また分からなくなる。

少し楽になったと思っても、
また苦しくなる。

前に進んだと思ったら、
また同じところに戻ってしまう。

そんなことを、何度も繰り返してきた。

たぶんわたしは、
17年という長い時間をかけて、
行ったり来たりしながら、
少しずつ、
自分と母との関係を
見つめてきたのだと思う。



そして、香りに出会った

そんな中で出会ったのが、
アロマセラピーだった。

もともと、わたしは香りが好きだった。

香りを嗅ぐと、
なぜか心が落ち着くことがあった。

理由は分からないのに、涙が出ることもあった。

「どうして、
この香りがこんなに心に深く響くんだろう」

香りを通して、
自分の心の奥に触れていくような感覚。

そんな不思議な感覚があった。

そして、小林ケイ先生の
『奇跡のアロマセラピー』という本に出会った。

もっと知りたい。

もっと感じてみたい。

もっと自分のことを理解したい。

そんな思いが、どんどん強くなっていった。

そしてわたしは、
アロマセラピーを学ぶことに、
深く入っていった。



植物について学ぶことも、
わたしにとって大きな発見だった。

その香りのもとになっている植物が、

どんな場所で育つのか。

どんな環境を好むのか。

どんなふうに生きているのか。

どんな特徴を持っているのか。

植物の背景や生き方を知っていくと、

「なんだか、わたしにも似ている」

と思うことがあったり、

「この植物の生き方から、
こんなことを教えてもらった気がする」

と思うこともあった。

そして、

「どうして、わたしはこの香りが好きなんだろう」

「どうして、この香りは苦手なんだろう」

そんな小さな感覚を見つめていくと、

それまで気づいていなかった
自分の心に出会うことがあった。

香りを手がかりにして、
自分の内側を見つめていく。

その時間が、わたしは好きだった。



心理学やカウンセリングを学ぶこと。

アロマセラピーを学ぶこと。

一見、別々のことのように見えるけれど、
わたしの中では、一本の糸のようにつながっていたように思う。

母を理解したくて、
心理学やカウンセリングを学んだ。

自分自身をもっと理解したくて、
香りや植物について学んだ。

そして、

「人の心って、
こんなにも奥深いんだ」

と思うようになった。

母のことを理解しようとしていたはずが、
いつの間にか、

「わたしは、どう感じているんだろう」

「本当は、どうしたいんだろう」

「わたしは、何を大切にしたいんだろう」

そんな問いを、自分自身に向けるように
なっていった。



そして今も、わたしは学び続けている。

心理学も。

カウンセリングも。

香りも。

植物のことも。

学べば学ぶほど、

「分かった」

と思うより、

「もっと知りたい」

と思う。

人の心も。

自分の心も。

まだまだ知らないことだらけだから。



母を理解したかった。

その思いから始まった学びは、
いつの間にか、

「わたし自身を理解したい」

という思いにつながっていた。

母の苦しさを知ることと、
わたしが苦しみ続けることは、同じではない。

母には母の人生がある。

そして、

わたしには、わたしの人生がある。

まだ、完全にそう思えるわけではない。

何度も揺れる。

何度も迷う。

それでも、少しずつ。

わたしは、
わたしの人生に戻っていく。

そんな感覚が、
少しずつ増えていった。

母を理解したい。

その先にあったのは、

母を変えることでもなく、
母から離れることでもなく、

自分自身を知ることだった。

そして、その旅は今も続いている。

――④へ続く。

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