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爆発前が最大のピーク

一番輝いて見える瞬間が、
実は一番危ういタイミングだったりする。

バブル経済が崩壊する直前は、
誰もが強気だった。

株価が暴落する前日も、
市場は史上最高値を更新していた。

崩れる直前が、
一番高く積み上がっている。

これは偶然の一致ではなく、
物理学が説明できる、
ひとつの構造なのかもしれない。



静かに積み上がり、ある日突然崩れる


物理学者ペル・バクとチャオ・タン、
クルト・ヴィーゼンフェルトは、
1987年に「砂山モデル」という
実験を発表した。

砂を一粒ずつ、
静かに積み上げていく。
しばらくは何も起きない。

でも、あるところまで積み上がると、
たった一粒を落としただけで、
山全体が崩れる。


小さな雪崩が起きることもあれば、
山の形が変わるほどの
大きな崩壊が起きることもある。

この現象を、学者たちは
|「自己組織化臨界」《じこそしきかりんかい》
と名付けた。

誰に指示されるでもなく、
自然と「崩れる寸前」の
状態に向かっていく。


そして、いつ、どれくらいの規模で
崩れるかは、直前まで分からない。



バブルという名の砂山


この構造は、金融市場にも
そのまま当てはまる。

経済学者ハイマン・ミンスキーは、
「安定は不安定を生む」という
逆説的な理論を唱えた。

市場が安定している時期が続くと、
人はリスクを取ることに
慣れていく。


借金をしてでも投資し、
それでもうまくいく経験が続くと、
さらに大胆になる。

こうして静かに積み上がった
過剰な楽観と負債が、
ある日突然、崩れ落ちる。


この瞬間は、
後に「ミンスキー・モーメント」
と呼ばれるようになった。

2000年3月10日、
ナスダック総合指数は
5048ポイントという
史上最高値をつけた。

1995年からの5年間で、
指数はおよそ6倍にまで
膨れ上がっていた。


その1か月後には、
指数の価値のうち
3割以上が失われていた。

2002年10月までに、
指数は最高値からおよそ8割下落し、
5兆ドル以上の時価総額が
消えたと言われている。

一番高く積み上がった瞬間が、
そのまま、
崩壊の始まりだった。



崩れる前に、兆しはある


砂山もバブルも、
崩れる瞬間を正確に
予測することはできない。


でも、崩れる「兆し」は
研究されている。

2009年、生態学者マーテン・シェファーらは、
学術誌『ネイチャー』に
重要な論文を発表した。

生態系や気候、金融市場など、
性質の異なるさまざまな系に共通して、
臨界点に近づくと
「回復が遅くなる」現象が
見られるという内容だった。

安定した状態では、
小さな衝撃を受けても、
すぐに元の状態へ戻る。


でも、臨界点に近づくにつれて、
その「戻る力」が弱まっていく。

これは「臨界的減速」と呼ばれ、
崩壊そのものより先に
観測できる、数少ない予兆のひとつだ。



ただし、崩れるとは限らない


ここまで読むと、
すべての物事はいずれ
崩れる運命にあるように
感じるかもしれない。


でも、そう決めつけるのも早計だ。

自己組織化臨界は、
崩れやすい状態を
説明する構造であって、
崩壊そのものを
保証するものではない。

早めに緊張を逃がしたり、
負債を整理したりすれば、
大きな崩壊を避けられることもある。



この視点を、どう使うか


「一番調子がいい時こそ、
一番危ういのかもしれない」

そう考えると、
少し身構えたくなるかもしれない。

でも、これは
不安を煽るための話ではない。

「むしろ、逆だ」

絶好調に見える時期こそ、
一度立ち止まって
自分の「戻る力」を
確かめてみるといい。

小さな失敗をした時、
以前よりも回復に
時間がかかっていないか。

無理を重ねてはいないか。

そうした小さな違和感こそ、
崩れる前に自分で気づける、
数少ないサインなのだと思う。



こうした「積み上がった末に崩れる」構造の
奥にも、地位や資源を求め続けてしまう、
もっと古い衝動があるのかもしれない。

そのあたりについては、以前
「全ての行動は種の保存が目的である」
という記事でも触れているので、
興味があれば読んでみてほしい。

過去の記事:「全ての行動は種の保存が目的である」⬇️



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〜今日の忘れたくない言葉〜

「一番輝いている瞬間ほど、
静かに確かめてみてほしい」

「崩れる前に気づけることは、
思っているより多い」


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参考
- Bak, P., Tang, C., & Wiesenfeld, K. (1987). "Self-organized criticality: An explanation of the 1/f noise." Physical Review Letters, 59(4), 381-384.
- Abelian sandpile model|Wikipedia:https://en.wikipedia.org/wiki/Abelian_sandpile_model
-
Minsky, H. P. (1992). "The Financial Instability Hypothesis." Levy Economics Institute Working Paper No. 74.
- Dot-com bubble|Wikipedia:https://en.wikipedia.org/wiki/Dot-com_bubble
-
Scheffer, M., Bascompte, J., Brock, W. A., et al. (2009). "Early-warning signals for critical transitions." Nature, 461, 53-59.


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