短くなった鉛筆
「辛いことがあったら、
幼稚園のことを思い出してください」
卒園を前に、担任の先生が
連絡ノートに書いてくださった言葉。
あれから約1年半。
私は今でも、この言葉を覚えている。
今日もなんとか登校できて、
胸を撫で下ろした。
1年生の時は、もう少しスムーズに
行けていたな……。
そんなことを思いながら、
過去の写真を何気なく眺めていた。
そこには、幼稚園での娘がいた。
幼稚園の頃は、
髪の毛をくくると、
必ず時計を見て、
長い針が5になると玄関へ向かっていく娘。
いつも私より早く、
靴を履いて
ちょこんと待っていた。
「1番」
幼稚園のカバンを肩からかける。
「2番」
反対の肩に水筒をかける。
「3番」
最後に帽子を被る。
年長組になる頃には、
私が数字を言わなくても、
自分で準備ができるようになっていた。
幼稚園バスの集合場所までは、
歩いて3分ほど。
遅れたことは一度もなかった。
集合場所では、
娘がチラチラとバスが来ていないか
確認しながら、
「あ!きた!」と教えてくれた。
あの頃は、
幼稚園へ行くことが当たり前だった。
「今日も泣かないもーん」
入園してすぐの、
慣らし保育2日目に言った娘の一言が、
今でも印象的だ。
泣かずに、毎日幼稚園に行った。
当時、
私は幼稚園に勤務していたため、
朝はバスの時間に間に合わず、
母に集合場所まで
送ってもらっていた。
年中組の5月に退職して
転職してからは、
週に1回、水曜日は
娘と一緒にバスの集合場所まで歩いた。
特別な時間だった。
1つ前の記事にも、
そのことに触れている。
思いがけないほどたくさんのスキをいただいた。
自分のことをこうして言葉にすることは
勇気がいった。
でも思い切ったからこそ、
何かが整理されていき、
「これでよかったんだ」と思えた。
読んでくださった皆さんに、
改めて感謝の気持ちでいっぱいです。
そして、最近の娘はというと。
小学2年生になり、
朝から憂鬱そうな顔をしていることも増えた。
「気にしんとき」
今日もそう言って励ました。
私自身にも言える言葉だ。
その言葉を言うと、
服を着替え始めたので、
心からホッとした。
娘にとって、
幼稚園の3年間は、
とても大切な時間だった。
卒園式の日、
私は担任の先生にお礼の手紙を渡した。
そこには、こんなことを書いていた。
1年間、連絡ノートでたくさんやりとりさせていただき、嬉しかったです。お忙しい中、お返事いただき、ありがとうございました。
宝物です。
楽しく面白く保育してくださり、先生のおかげで毎日嫌がることなく登園できました。
小学校に向けて、不安もありますが、先生がおっしゃったように、辛いことがあれば幼稚園のことを思い出しながら、乗り越えたいと思います。娘にとっても私にとっても、かけがえのない宝物のような1年間でした。
本当にありがとうございました。
今読み返してみると、
私は「宝物」という言葉を
2回も使っていた。
エッセイしりとりに参加させていただいた記事に書いた言葉と同じだった。
当時、先生をしていた私は、
保護者の方から
「この連絡ノートは宝物です」
と言っていただいたことがあった。
「宝物」という言葉に、私は強く惹かれた。
でも、こうして振り返ってみると、
今度は私が先生に、
「宝物です」と伝えていたことにハッとした。
そして、さらに驚いたのは、
年長組の作品展で展示されていた、
娘の描いた電車の絵が
「全日本こども美術大賞展」に出品され、
入選したことだった。
あの頃の感動を忘れたくなくて、
noteのプロフィールに設定した。
一番上に細長く表示されていて、
青色の絵の具が特徴の絵だ。
初めてもらった賞状。
卒園式の日、式典が終わると、
クラスに戻り、
みんなの前で表彰されていたらしい。
(保護者は園庭で待っていた)
サクラクレパスの鉛筆と、
消しゴムと、
スケッチブックももらっていた。
「重いわ〜!」
照れながら、
ビニールバッグを私に渡した。
自分が描いた絵を褒めてもらい、
表彰されたという経験は、
きっと娘の中に今も残っている。
作品展の日には、
大学の先生が見にこられたそうで、
「のびのびと描いているね」と褒めてくださった。
娘は幼稚園で他にもいろんなことを経験した。
たくさん褒めてもらった。
私も数えきれないほど褒めた。
今も。
だからこれからも娘のいいところを
どんどん言葉にして伝えていきたい。
あの日もらった
サクラクレパスの鉛筆や消しゴム、
スケッチブック。
今でも大切に持っている。
鉛筆は小学校で使っていたので、
もうだいぶ短くなってしまって、
引き出しにしまっている。
お絵描きや音楽会でのマリンバ、
張り切ってニコニコで踊るお遊戯、
娘は得意なことがいっぱいある。
たまには写真や動画を娘と見て、
当時がんばっていたことを
振り返りたい。
「素敵なところがいっぱいあるよ」と
私は何度でも伝えたい。
娘が辛いことにぶつかったときには、
私も一緒に幼稚園のことを思い出したい。
あの短くなった鉛筆がしまってある
引き出しを、
たまにはそっと開けてみよう。
あの頃の娘の姿を、
思い出せるように。

いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援していただけると嬉しいです。
いただいたチップは、大切に娘との時間に使わせていただきます。
いつも本当にありがとうございます。