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仕事をつくるということ

突然、「し」から始まるエッセイを書くことになった。

きっかけは、Xでも交流させてもらっているSANACO(さなこ)さんから回ってきた一本のバトン。

今回参加するのは、マイキーさん主催の「#エッセイしりとり」。

前の人の記事タイトルの最後の一文字を受け取り、その文字から始まるタイトルで自由にエッセイを書く企画だ。

SANACOさんは看護師としての経験をもとに、心や身体、人とのつながりについて発信されている方。

今回の記事は、「退屈がたまらない話」

忙しくしていることが正義になりがちな毎日の中で、「何もしない時間」にも意味がある。

そんな話を、ところどころクスッとしながら読んでいたら、最後に僕の名前が出てきた。

次は「し」。

しかも締切は目前。

「し……」

しあわせ。
失敗。
資産。
社長。

いろいろ考えた。

その中で最後まで残ったのが、「仕事」だった。

今の僕は、この冬の訪問看護ステーション開設に向けて、毎日のように仕事のことを考えている。

ただ、最近考えているのは、

「自分がどんな仕事をするか」

ではない。

「どんな仕事をつくるか」

ということだ。

仕事は、与えられるものだった

理学療法士になって、もう19年になる。

振り返れば、ずっと誰かがつくった場所で働いてきた。

会社があり、ルールがあり、給与があり、勤務時間があり、その中に自分の役割がある。

新人の頃は、それが当たり前だった。

もっと知識をつけたい。
もっと技術を身につけたい。
もっと患者さんを良くしたい。

自分がどう成長するかには興味があっても、会社そのものをどうつくるかなんて考える余裕はなかった。

ただ、不思議なことに子どもの頃から「社長になりたい」とぼんやり思っていた。

何の会社をやりたいのか。

そもそも社長が何をする人なのか。

たぶん、ほとんど分かっていなかった。

当時の僕にとって「社長」は、職業というより、

自分で決められる人。
人に縛られない人。
自分の人生を自分で動かしている人。

そんな存在だったのだと思う。

とはいえ、社会に出てすぐ会社をつくろうとしたわけではない。

まずは理学療法士として一人前になること。

患者さんと向き合うこと。

目の前の仕事を覚えること。

そうして働いているうちに、気づけば19年が経った。

良い仕事は、個人だけではつくれない

その19年の中で、少しずつ変わったのが「仕事」の見え方だった。

最初は、自分と患者さんとの間にあるものだった。

でも在宅の世界に入ると、それだけでは済まなくなる。

その人の生活がある。

家族がいる。

看護がある。

介護がある。

制度がある。

地域がある。

そして、そのサービスを提供している会社がある。

どれだけ一人の専門職が頑張っても、組織の仕組みが悪ければ、良い仕事は長く続かない。

真面目な人ほど抱え込む。

できる人ほど仕事が集まる。

優しい人ほど無理をする。

逆に、働きやすさだけを追い求めても、会社そのものが続かなければ意味がない。

良いサービスを届けたい。

働く人にも良い環境をつくりたい。

でも、会社として利益も出さなければならない。

働けば働くほど、

「良い仕事って、個人の努力だけではつくれないんだな」

と思うようになった。

仕事そのものをつくる側へ

管理する側も経験した。

制度を変えたり、チームの形を変えたり、教育の仕組みを考えたりした。

実際に変えられたこともたくさんあった。

だからこそ、逆に見えたものもある。

現場の工夫だけでは変えられないことがある。

採用。

評価。

給与。

働き方。

会社として何を大切にするのか。

誰を評価し、何を良しとして、どんな人が長く働ける場所にするのか。

考えてみれば、それらも全部「仕事」だった。

訪問に行くことだけが仕事ではない。

リハビリをすることだけが仕事でもない。

人が良い仕事をできる環境そのものをつくることも、仕事なんだ。

そう考えるようになった。

今、僕は会社をつくろうとしている。

子どもの頃に思い描いていた「社長」とは、ずいぶん違う。

昔は、自分で決められることが自由だと思っていた。

でも会社をつくろうとしてみると、自分で決められるということは、その決定に自分で責任を持つことでもある。

スタッフの生活がある。

利用者さんの生活がある。

家族がいる。

地域がある。

そして、会社を続ける責任がある。

思っていたより、ずっと重い。

それでも、自分でやってみたいと思う。

それは「社長」という肩書が欲しいからではない。

これまで働いてきて、

「もっとこうだったらいいのに」

と思ったことが、たくさんあるからだ。

給与も大事。

休みも大事。

成長できることも大事。

人間関係も大事。

やりがいも大事。

人生を仕事だけに支配されないことも大事。

そして、良い医療や介護を届けることも当然大事だ。

どれか一つを手に入れる代わりに、何かを諦めるのではなく、

会社の設計次第で、もう少し全部を良くできないだろうか。

今は、そんなことを考えている。

この冬、仕事をつくり始める

僕はこれまでずっと、「仕事をする人」だった。

誰かがつくった会社で、

誰かがつくった仕組みの中で、

その仕事をどうすればもっと良くできるかを考えてきた。

これからは少し違う。

仕事そのものをつくる側になる。

どんな人と働くのか。

何を大切にするのか。

どう評価するのか。

どう成長できる場所にするのか。

どんなサービスを地域に残すのか。

答えはまだない。

むしろ、分からないことばかりだ。

理学療法士としては19年目でも、経営についてはまだ新人。

だから、また一から学ぶ。

失敗もすると思う。

途中で考えが変わることもある。

それでも、自分たちが働きたいと思える場所を、自分たちでつくってみたい。

利用者さんにとって良い会社。

働く人にとって良い会社。

そして、きちんと続いていく会社。

その三つを、できるだけ同じ方向に向けたい。

それが今の僕にとっての、

「仕事をつくる」ということなのだと思う。

「し」から始まる言葉を考えていただけなのに、ずいぶん大きな話になってしまった。

エッセイしりとり。

なかなか恐ろしい企画である。

でも、こうして立ち止まって考えてみると、悪くない。

SANACOさん、バトンをありがとうございました。
マイキーさん、素敵な企画をありがとうございます。

そして僕からのバトンは、
「仕事をつくるということ」の最後の一文字、「と」

とはいえ、今日は企画最終日。

残り時間もわずかなので、今回は誰かを指名するのはやめておきます。

もしこれを読んで、

「ちょっと書いてみようかな」

と思った方がいたら、どうぞ「と」のバトンを受け取ってください。

そして、この冬。

僕は仙台で、新しい仕事を始める。

正確には、

新しい仕事を、つくり始める。

今の自分には、その言い方が一番しっくりくる。

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