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働きやすい会社なのに組織の「熱量」が上がらない...

皆様、こんにちは!
株式会社燈堂代表の吉田有輝です。

これまで人事として複数社に携わり、従業員数十名のスタートアップから東証上場企業まで、規模もフェーズも異なる組織でMVV浸透や文化づくり、組織サーベイをもとにした改善施策の設計に携わってきました。その中で近年、特に増えているのが今日お話しする相談です。

「働きやすい会社なのに組織の「熱量」が上がらなくて」

組織開発の相談を受けるとき、こういう言葉から始まることが増えました。リモートワーク導入、フレックス制度、福利厚生の充実。そうした取り組みを丁寧に進めてきた会社ほど、この壁にぶつかる印象があります。

本記事では、この違和感の正体を「満足度とエンゲージメントの違い」という切り口から整理し、燈堂の視点から、できるだけ実務に近い温度感でお話ししていきます。

1. 働きやすいのに熱量がない組織で起きていること

例えば、こんな会社を想像してみてください。

社員数150名ほどのIT系企業。離職率は業界平均より低く、サーベイでも「働きやすい」という声が多い。経営陣も現場との距離を縮めようと、定期的に全社MTGを開いている。

でも、その全社MTGで発言するのはいつも同じ数人。チャットも動かない。会議が終わると、Slackには「お疲れさまでした!」「ありがとうございました!」というメッセージだけが流れます。

経営陣からすれば「ちゃんと情報共有しているのに、なぜ反応がないのか」現場からすれば「何を言っても変わらないし、余計なことは言わないほうがいい」お互いが悪意を持っているわけではない。でも、どこかですれ違っているわけです。

この状態が続くと、最終的に起きるのは「静かな離脱」です。辞表を出すわけではないけれど、心はもうここにない。そういう社員が少しずつ増えていきます。

2. 働きやすさだけでは組織が変わらないのか

背景には、混同されがちな2つの概念の違いがあります。順に見ていきましょう。

2-1. 「満足度」と「エンゲージメント」は、まったく別物

満足度は、給与や制度、環境への評価です。「不満がない」状態をつくることはできます。エンゲージメントは、「この会社の未来に自分も関わりたい」という主体的な関与です。条件だけでは、なかなか生まれません。

先ほどの会社に戻ると、サーベイで「働きやすい」と答えた社員たちは嘘をついているわけではありません。本当に働きやすいと感じている。でも「この会社のために何かしたい」とは、別に思っていない。この微妙なズレが、熱量のない組織を生み出します。

2-2. 働きやすさの向上が、やりがいを薄める構造

少し意外に聞こえるかもしれませんが、「働きやすさ」の向上が、皮肉にも「やりがい」を薄める構造になることがあります。

例えば、リモートワーク。通勤がなくなり、自分のペースで働ける。これは確かに快適です。でも同時に、廊下で偶然同僚と話す機会や、一緒に昼食を食べながら仕事の話をする時間も消えました。

「なんのためにこの仕事をしているのか」を感じる場面の多くは、実は制度の外側にいる人との何気ないやりとりの中にあったりします。環境を整えることに集中するあまり、意味を伝える場が失われていないか。これは、多くの組織が見落としがちな盲点です。

2-3. 経営の言葉が、現場に届かない構造

経営が発信したメッセージが、現場に届いていないと感じることはありませんか。これはよくある構図です。経営の言葉は必然的に抽象的になりがちで、「事業成長を加速させる」「顧客価値の最大化」といったフレーズは、現場の担当者には自分ごととして受け取りにくい。この「翻訳の断絶」が、制度と現場の間に見えない壁をつくります。

3. エンゲージメントを左右する3つの機能

ここからは、組織開発の現場で実際に効果を発揮している3つの視点を、具体的に紹介します。

3-1. 「なぜ」を語れているか

あるメーカーの人事担当者から、こんな話を聞いたことがあります。

「うちの社長、戦略の話はよくするんですが、なぜこの事業をやっているかは、あまり話さないんですよね。社員も、自分たちが何のために働いているのか、正直よくわかっていないと思います」

強い組織には、「何故、自分たちはこれをやっているのか」が明確に語られています。それは理念やビジョンの言葉を貼り出すことではなく、日常の会話の中で繰り返し、具体的に語られているかどうかです。人は条件ではなく、意味に共感して動きます。

実践のポイント

  • 全社MTGの冒頭5分を「なぜ」の共有時間に固定する

  • 経営メッセージには必ず「これは誰の、どんな日常を変えるのか」の一文を添える

3-2. 管理職は経営と現場の両面の理解があるか

ここで機能するのが、ミドルマネジメントの「理解」です。

例えば、経営から「顧客との関係を深めよう」というメッセージが出たとき、それをそのまま共有するだけのマネージャーと、「それってつまり、私たちのチームでいえば、お客様への提案頻度を月1回から週1回に変えることだと思う」と具体化して伝えるマネージャーでは、チームの動き方がまったく変わります。抽象を具体に変換する。これが管理職に求められる、最も重要なスキルの一つです。

実践のポイント

  • 経営メッセージが降りてきたら、マネージャー自身が「自チームなら何をするか」を1文で言語化してから展開する

  • この「翻訳」がうまい管理職の言い回しを社内で可視化・共有する

3-3. 心理的安全性は、仲の良さとは違うか

「うちのチームは仲がいいので、心理的安全性は高いと思います」こういう声をよく聞きますが、仲の良さと心理的安全性は別物です。仲が良いチームでも、「上司の方針に異を唱えられない」「失敗を報告すると評価が下がる気がする」という空気があれば、心理的安全性は低い状態です。

心理的安全性とは、「間違いを指摘される怖さ」や「評価が下がるかもしれない不安」を乗り越えて、率直に意見を言えたり挑戦できたりする状態のことです。これが整うと、失敗が隠されなくなり、問題が早期に発見され、「こうしたらどうか」という提案が自然に出てくるようになります。

実践のポイント

  • 1on1で「言いにくかったこと」を聞く時間を意図的に設ける

  • 管理職自身が失敗を先に開示する(自己開示が場の空気をつくる)

4. 前提を変えることが、組織開発の本質

最後に、現場でよく目にするすれ違いについて触れておきます。

部下がミスをしたとき、「次はこうしてね」と行動だけを修正しても、同じミスが繰り返されることがあります。なぜなら、その人の判断基準そのものは変わっていないからです。

「なぜその選択をしたのか」「どういう優先順位で動いたのか」ここを丁寧に掘り下げることで、初めてカルチャーが変わり始めます。

行動を変えるのではなく、前提を変える。これが、組織開発の本質的な仕事だと私たちは考えています。条件を整えることから、共感をつくることへ。管理することから、対話することへ。指示を出すことから、意味をつなぐことへ。

「制度は整っているのに、組織が変わらない」その感覚は、次のステージに進むサインかもしれません。

まずは自社のMTGやサーベイの中に、「なぜ」が語られているか、翻訳が起きているか、率直な声が出ているか。この3つの視点で見返してみてください。そこに、次の一手のヒントが眠っているはずです。

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