『VIVANT』奪還作戦の「メタルギア」感の正体 「元ネタの元ネタ」は60年以上前にも?
『VIVANT』第2シーズンの「別班奪還作戦」を見て、『メタルギア」を思い浮かべたゲームファンは多いでしょう。潜入、ハッキング、脱出劇と、メタルギアシリーズを彷彿とさせる見せ場が展開されましたが、実はその「メタルギア」にも、手本となった作品がありました。
演出の各所に「メタルギア」感、完全一致のセリフも

敵地への潜入、仲間の救出、裏で作戦を支えるハッカー、追っ手をかわしての脱出……。ドラマ『VIVANT』第2シーズンで描かれた別班奪還作戦には、名作ゲーム「メタルギア」シリーズを思わせる要素がそこかしこに見られました。
小島秀夫監督が生み出した「メタルギア」といえば、敵に見つからないよう敵地へ潜入して任務を遂行するステルスアクションゲームです。では、あの独特の世界観や演出は、どのようにして生まれたのでしょうか。
※この記事では、ドラマ『VIVANT』第2シーズンの内容に触れています。ネタバレにご注意ください。
ドラマで話題となったのは、中国の裏組織「シンシー」に囚われた別班員「黒須駿(演:松坂桃李)」らを救うため、主人公の「乃木憂助(演:堺雅人)」たちが断崖の上に築かれた敵拠点へ潜入する第20話です。遠隔地にいるハッカーからのサポートを受けながら敵地に仕掛けられたトラップをかいくぐり、仲間たちの救出に挑みます。
ここまででも十分に「メタルギア」を連想させますが、さらに印象的なのが、乃木が別班員たちのもとへたどり着いた際のセリフです。「メタルギア」シリーズの主人公「ソリッド・スネーク」の決めゼリフを思わせる「待たせたな、帰るぞ」という言葉を口にしました。
しかも第11話には「メタルギア」の生みの親である小島監督がカメオ出演し、第21話ではスネーク役でおなじみの大塚明夫さんが声でサプライズ出演を果たしています。こうした点からも、制作陣がいかに「メタルギア」を意識していたかがうかがえるでしょう。
「元ネタの元ネタ」は名作映画?
実はそんな「メタルギア」も、往年のスパイ映画やアクション映画から影響を受けて生まれた作品です。原点となったのは、捕虜たちの集団脱走を描いた1963年の映画『大脱走』でした。小島監督がKONAMIに入社して間もない頃、性能に限りのある「MSX2」というパソコン向けのゲーム開発を任されます。そこで着想を得たのが『大脱走』の筋立てです。
敵を倒すのではなく「隠れる」ことを目的にすれば、登場する敵兵士の数が少なくてもゲームとして成り立ちます。こうした逆転の発想が、初代『メタルギア』の誕生につながったのです。
また断崖にそびえる城への潜入にも、映画にルーツがあります。小島監督が「メタルギア」に影響を与えた作品として挙げた15本のひとつ、1961年の『ナバロンの要塞』です。少人数の部隊が絶壁をよじ登り、難攻不落の要塞に挑む物語は、「メタルギア」の潜入任務というコンセプトにも影響を与えました。
さらに主人公のスネークも、1981年の映画『ニューヨーク1997』に登場する「スネーク・プリスキン」がモデルといわれています。巨大な刑務所と化したマンハッタン島にひとりで乗り込む人物で、2001年発売の『METAL GEAR SOLID 2 SONS OF LIBERTY』では、スネーク自身が「イロコィ・プリスキン」の偽名を使う場面まで登場しました。
そして極めつけは、スパイ映画の金字塔「007」シリーズです。『METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER』のオープニングは、明らかにボンド映画を意識した演出で、ゲーム内には『007』の大ファンという設定の「ゼロ少佐」まで登場します。彼が作品の魅力について熱弁を振るう場面も描かれました。
映画で描かれた潜入劇や脱出劇は、ゲームの潜入任務へと姿を変え、今度はドラマの奪還作戦にもその面影をのぞかせています。こうしてたどると、『VIVANT』の「メタルギア」感は、スパイものの見せ方が映画からゲーム、そしてドラマへと一周した姿なのかもしれません。
ドラマが大詰めを迎えるなか、映画やゲームとの共通点を探しながら『VIVANT』の展開を追うと、また違った面白さが見えてきそうです。
(ハララ書房)