竹取物語を、五感で読み進める|選ぶのは、誰だろう
前回、
として、
光る竹。
「なよ竹のかぐや姫」という名前。
見えない姫に集まってくる人々。
物語の入口にある3つの場面から、
自分なりに感じたことを書いてみた。
もともとの始まりは、
という小さな問いだった。
千年以上前の言葉を、
令和にいる今の自分で読んでみる。
その続きを、
もう少し掘ってみたい。
音のしおり
今回は、
長いBGMではなく、
ほんの少しだけ音を置いてみる。
竹林。
夜。
人の気配。
物語へ入る前の、
小さな「音のしおり」。
※当時の音を再現したものではなく、
読んでいる私の中に浮かんだ妄想Soundです。
▶ Sound
最近の読み方
少しずつ、
『竹取物語』を読み進めている。
ただ、
「今日はここからここまで読む」
という読み方は、
あまりしていない。
気になったときに、
本を開く。
数ページだけ読む。
場所も、なるべく固定しない。
家で読むこともあれば、
外で読むこともある。
そして最近は、
原文を、
少しだけ声に出してみることもある。
これが、なかなか難しい。
文字を目で追うのと、
実際に口から音として出してみるのでは、
ずいぶん感覚が違う。
うまく読めない。
息を置く場所もわからない。
現代の文章とは、
身体に入ってくるリズムが違うようにも感じる。
それでも、
訳文を読んで、
原文へ戻り、
寸評を読む。
また原文を見る。
そんなふうに行ったり来たりしていると、
物語を先へ進めることより、
一つの言葉で立ち止まる時間
が増えてきた。
今回は、
導入の先で気になった3つ。
1|「色好みと言いはるるかぎりの五人」
かぐや姫の噂を聞き、
多くの人が、
その姿を見ようと集まってくる。

しかし、
簡単には会えない。
やがて、
諦めて帰る人も増えていく。
それでも残ったのが、
五人の貴公子だった。
【原文から】
色好みと言いはるるかぎりの五人
ここで、
また妙なところが気になった。
〖私なりの感想〗
そもそも、最初は何人いたのだろう。
現代なら、
応募人数。
一次選考。
最終選考。
そんな数字が出てきそうだけれど、
もちろん、
そんな仕組みがあるわけではない。
写真もない。
SNSもない。
メッセージを送ることもできない。
気になるなら、
その場所へ行く。
翁の家へ行き、
何とか会えないかと試みる。
今の感覚で眺めていると、
いつの間にか
「最終選考の五人」
だけが残ったようにも見えてくる。
では、
この五人は、
なぜ残ったのだろう。
家柄なのか。
執念なのか。
恋心なのか。
それとも、
単に諦めが悪かったのか。
そして翁は、
次々にやってくる人たちを
どう見ていたのだろう。
一人ひとりと話したのだろうか。
家の中では、
どんな会話があったのだろう。
ここで、
ほとんど物語の表に出てこない
媼のことも気になってきた。
彼女は、
この状況をどう見ていたのだろう。
2|「なんでふさることかし侍らむ」
残った五人。
翁は、
その中の誰かと結婚することを
かぐや姫に勧める。

育ててきた親としては、
きっと自然な気持ちだったのだと思う。
ところが、
かぐや姫は簡単には受け入れない。
【原文から】
なんでふさることかし侍らむ
ここを読んだとき、
妙に現代と近いものを感じた。
〖私なりの感想〗
なぜ、
結婚しなければならないのだろう。
今の私には、
そんな問いにも聞こえた。
もちろん、
千年以上前の価値観と、
令和の結婚観を
そのまま重ねることはできない。
それでも、
「普通は、こうするもの」
という感覚は、
今にも残っている気がする。
結婚する。
会社に勤める。
家を持つ。
ある年齢になったら、
次の段階へ進む。
周りがそうしているから。
みんながそう言っているから。
でも、
その「普通」は、
本当に自分の普通なのだろうか。
翁には翁の考えがある。
かぐや姫には、
かぐや姫の考えがある。
どちらかが正しいというより、
大切にしているものが違う。
親と子。
男性と女性。
世代。
立場。
そんな違いから生まれる
価値観の食い違い。
千年前の物語なのに、
そこには、
妙に人間らしいものが残っている。
そして、
かぐや姫は単に
「結婚したくない」と言っているだけではないようにも見える。
相手の本当の心を知らないまま、
あとから後悔したくない。
では、
どうやって確かめるのか。
そこから、
次の場面へ進む。
3|「何が難からむ」
かぐや姫は、
五人それぞれに
違う条件を提示する。
どれも、
簡単には手に入らないものばかり。

翁は困る。
そんなものを、
どうやって用意するのか。
どう伝えればいいのか。
すると、
かぐや姫は言う。
【原文から】
何が難からむ
短い。
でも、
妙に強い。
〖私なりの感想〗
ここが、
個人的にはかなり気持ちよかった。
翁が困っているところへ、
「何が難しいの?」
と、
ピシャリと言い切る。
そして、
ただ全員を断るのではない。
五人それぞれに、
違う条件を出す。
ここまで読むと、
最初に持っていた
かぐや姫の印象が少し変わってくる。
美しいから、
大勢の人に求められる。
つまり、
「選ばれる人」
だと思っていた。
でも、
気がつけば違う。
誰と会うのか。
何を条件にするのか。
どうやって相手の心を確かめるのか。
そのルールを決めているのは、
かぐや姫だった。
気がつけば、主導権が変わっている
最初は、
翁がかぐや姫へ
結婚を勧めている。
上下関係だけを見れば、
翁が判断する側にも見える。
ところが、
少し先へ進むと、
かぐや姫が条件を決め、
翁がそれを外の世界へ伝える。
五人の貴公子たちは、
その条件を受けて動き出す。
今の仕事の感覚で眺めると、
少し面白い。
かぐや姫が、
意思決定。
翁が、
伝達と調整。
五人が、
実行。
そんな構図にさえ見えてしまう。
もちろん、
千年前の物語を
現代の組織図に当てはめるつもりはない。
でも、
今の自分の経験を持ったまま読むと、
そんな読み方まで浮かんでしまう。
選ばれる人から、選ぶ人へ
今回読んだ3つの場面を並べてみる。
多くの人が集まる。
↓
五人が残る。
↓
翁が結婚を勧める。
↓
かぐや姫が疑問を投げる。
↓
五人に条件を出す。
こうして並べてみると、
物語の中で、
少しずつ主導権が動いているように見える。
最初は、
誰かから見られ、
求められ、
選ばれる存在だった
かぐや姫。
でも、
いつの間にか、
選ぶ側に立っている。
これは、
前に考えていた
「令和の承認」
という問いにも、
少しずつ近づいている気がする。
求められること。
見られること。
評価されること。
でも、
それだけが
人の価値ではない。
大切なのは、
その中で、
自分が何を選ぶのか。
そんなところまで、
考えるようになった。
そして、まだ気になること
一つ掘ると、
また別のものが出てくる。
媼は、
何を感じていたのだろう。
かぐや姫と二人のとき、
どんな話をしていたのだろう。
普段は、
どんな服を着ていたのだろう。
どんなものを食べていたのだろう。
どんな色が好きだったのだろう。
三か月ほどで急速に成長したというけれど、
どれくらいの背丈だったのだろう。
部屋は。
灯りは。
紙は。
筆は。
そして、
五人が家の外に集まっていた夜には、
どんな音がしていたのだろう。
一つ答えを見つけたいと思って
井戸を掘る。
すると、
横から別の水脈が出てくる。
そんな感覚が、
だんだん面白くなってきた。
今回は、ここまで
『竹取物語』は、
知っている物語だと思っていた。
竹から生まれ、
美しく育ち、
最後は月へ帰る。
昔は、
それくらいの輪郭だった。
でも、
原文と訳文を行ったり来たりし、
声に出してみたり、
読む場所を変えてみたりすると、
一つの言葉から
別の景色が見えてくる。
今回は、
「選ぶのは、誰だろう」
というところで、
一度ここに置いておこうと思う。
まだ、
五つの難題そのものには
ほとんど入っていない。
音も。
色も。
暮らしも。
月も。
まだまだ、
掘ってみたい井戸がある。
でも、
次にどこを掘るかは、
今は決めない。
また本を開いたとき、
引っかかった言葉から。
ゆっくり、
続きを読んでみようと思う。
100万回再生の時代に、古典を読む。
今の自分で。
五感を使いながら。
📚 余白の本棚
▶[感謝の循環]
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