三題噺ショートショートvol.64_夢
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスシさん?

三題
①回送電車
②ノンアルコールビール
③写真立て
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「夢」まいりましょうか。

博はノンアルコールビールを片手に、東京行きの列車を待っていた。
「これ持って帰れ。もう酒は飲むなよ」
回送電車を何度も見送ったような気がする。
甲府からの帰路。途中の乗り換え駅でベンチに座ったのが運の尽きだった。
まだ日が高かったのに、虫の音ばかりが聞こえてくる。
高校時代、女子マネの梓の存在なんて気にも留めなかった。
甲子園のマウンドにも登り、ベストフォーにも輝き。六大学を出てドラフト4位でプロにもなった。
だが。
やっとのことで家に辿り着き。
廊下の記念パネルに吐き捨てた。
「全国3位?ベストフォーだよ、ただの!」
倒れ込んだベッドの枕元の棚の写真立てには、最後の試合後の写真が入っている。
3人だけ号泣したまま写っている。
俺達は…いや、梓と光太郎は仲が良かった。
祝福するつもりで披露宴に出たが。飲むほどに、湧き上がる本音に収拾がつかなくなった。
青春時代なんて全然、ほのぼの思えないじゃねぇかとまた悪態をつき、知らぬ間に眠りについた。

《余滴》
いい歳をして。今回は青春とは何かを考えながら書きました。ラストの博の悪態には、ある名曲への小さなオマージュを忍ばせています。最初から気付いた方は、きっと同世代ですね。笑
そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑っていた。
「コジくん、マッサー(注1)してね。箸にも棒にもかからない、何とか賞なんて戯れ言言ってないでさぁ」
「…」
マッサージをすると、家内は、上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
今日の投稿を入れて、64作。俺にしちゃあ、三題噺もけっこう書くには書いたが。これ、どこまで続くの?
いつまで書くの?
初回から一年を超え、まだまだお題を発してくれるヤスシさんとの根競べだ。

